BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――冷え込む

 前検初日と完全に春の陽気だったものが一転、曇り空の今日は空気が冷え込んでいる。ピットの寒暖計は14℃、まあ3月としてはこんなものかな、とも思わないではないが、昨日までがとにかく暖かったので、かなり寒く感じられる2日目である。選手のピットでの装いも冬仕様であり、原田幸哉はグランプリジャンパーを着用していた。これ、かなりレアな光景! 原田はオリジナルのショッキングピンクがまぶしいウェアを着ていることが多く、僕はグランプリジャンパー姿を初めて見たんじゃないかな。ズボンが黄色なのは、今日は5号艇ということ。原田はレースに臨む際には、艇番の色と同じ乗艇着を着るのです。つまり、毎回6色分、レース場に持ち込んでいるわけですね。

 気候が変わったこともあるのか、ペラ調整所は満員御礼。まあ、まだ2日目だから、そうでなくとも初日のレースでの感触を元に調整を煮詰めようとするのは当然か。ペラ室の近くで突っ立っていたら、片岡雅裕が猛然とした勢いでやって来て、軽く会釈しながらペラ室に飛び込んだ。試運転の後、すぐにでも調整に反映させようと大急ぎでペラ室までやって来たという趣きだった。

 久田敏之は、毒島誠に手応えを聞かれて「どうにもならんから、焼きを入れた」。ペラが開いちゃってどうしようもないから、いま焼きを入れている、ってことでしょうかね。それでもその間、休んではいられないと白ペラをつけて水面へ。白ペラとは回転数の調整用のプロペラで、レース場の装備品。これをつけて係留所でモーターを動かし、ニードルなどの調整をするわけである。ペラを叩く以外にもやることはたくさんあるのだ。

 久田に声をかけた毒島は整備室へと向かっている。ボートを見ると、まだモーターが乗っていないではないか。本体整備か、とこっそり覗きに行くと、ギアケース調整を行なっていたのだった。いや、その前に本体を割っていた可能性はあり、さらにギアケースも、ということかもしれない。ギアケース調整は本体をボートに装着したあとでもできるからだ。今日は11R1回乗りと時間があるから、やれることはすべてやっておこうということだと思われる。

 で、1回乗りといえば、桐生順平が1R1回乗りなのである。これは珍しいことではあるまいか。常に銘柄級として参戦する桐生は売上の貢献度も高いから、後半レースへの登場が当然。それがいきなりオープニングに登場し、今日はそれで打ち止めなのだ。1Rは差し切り快勝。エンジン吊りを終えて控室へと戻る途上に仲良しの茅原悠紀の姿を見つけると、「今日の仕事、これで終わり!」だって。茅原が大笑いすると、「帰っちゃダメ?」とも。はい、ダメです(笑)。帰宿1便は10R終了後なので、それまでエンジン吊りなどをしてお待ちください。やはり1R1回乗りというのは、桐生としても近年はあまり経験していないことだという認識なんでしょうね。それでおどけてみせたという次第。

 一方、1R3着の遠藤エミは、次が7R。中5レースあるとはいえ、それほど時間に余裕があるというわけではない。ということで、エンジン吊り後に控室へと消えていくと、あっという間に黒いカポックを手に装着場にあらわれた。ゆっくりしている時間がないとばかりに、後半レースへの準備を始めたのだ。普段からあまりのんびりとしている様子を見かけない人ではあるが、あまりに早く再登場したので少々驚いたのである。

 その遠藤とそう時間差がないうちに、関浩哉も再登場している。関は今日は桐生同様に1R1回乗り。ボートを陸に上げた後、即座に試運転用の艇番をつけたのは目撃していたのだが、休む間もなく水面に出るつもりですか! あるいは何らかの調整をすぐにでも始めたいということか。いやはや何という精勤ぶり。冷静に淡々と、と選手紹介で話した関だが、冷静ではありつつ、淡々というよりはかなり熱っぽい姿に見えたのであった。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)