BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――苦しい……

 ペラ室から出てきた白井英治が遠目に見えた。8Rは2着の展開が、競り負けての3着。引き波を超えるのに苦労している雰囲気で、旋回系の足が物足りなく見えていた。こちらのほうに向かって白井は歩いてくるのだが、これは声がかけにくいなあ。そんなふうに思ってちょっと目を逸らしたりしていたのだが、ん? ん? 白井のほうからこちらに近寄って来るではないか。
「死ぬほど出てねえ」
 あら、やっぱり。顔はニヤニヤしていて、こちらの反応をうかがっているようにも見えるのだが、ようするに笑えるほど厳しい足色だったということだろう。つまり、悔しいのだ。こちらも感想などを伝えたが、去り際にもう一発、死ぬほど出てねえ。それでも3着2回はさすがだというほかないのだが、本人はまったくもって不満なのである。

 厳しい足色といえば、田村隆信も苦しんでいる。昨日の後半3着以外は6着。整備も試運転もとことんやっているのだが、なかなか上向いてこない。今日は4R1回乗りだったのだが、その後も試運転が許されている10R発売中まで水面を走り続けた。最後の最後まで、まるで新人のように周回を重ねていたのだ。試運転後もペラ室に入っていって、まだ仕事は終わらない。少しは上向くといいのだが……。

 丸野一樹もなかなか厳しく、12R1回乗りの今日はやはり朝から乗りっぱなし、叩きっぱなし。本体整備も行なっている。10Rの締切が迫った頃にペラ室を出て係留所を向かう際、大きな大きな溜め息ひとつ。そりゃそうだよなあ。朝から働きっぱなしだもの。その瞬間をこちらに見られたと気づいたマルちゃん、「働き通しで疲れました~」とにこやかに係留所へと降りていった。12Rは4着だったけど、ほんと今日も今日とて、お疲れ様! 明日こそは進境があることを期待します!

 馬場貴也もかなり厳しそうっすね。10Rは結果5着となったのだが、道中は3番手優勢の瞬間があり、ターン自体はむしろさすがの旋回力と見えた場面もあった。なのに、ずるりと下がっての5着だから、必死の調整が報われてはいないようだった。レース後の馬場はさすがにガックリ。ヘルメットをかぶったまま、視線を落としてうつむいて、カポック脱ぎ場へと向かっている。そのカポック脱ぎ場でも、レース後の感想戦を語り合っている他の選手とは少しだけ離れて、黙々とヘルメットの水滴を拭き上げているのだった。明日は1Rに登場。かなり慌ただしい朝を過ごすことになるだろう。

 苦戦に喘ぐ強豪を尻目に、8Rで6コースまくり一撃を決めた菅章哉はゴキゲンです。スタートさえしっかり決めればまくれる仕上がりになった、と言っていたように、コンマ02トップスタートからまくり切った。そこで、3連単4000円台とは人気になってるよねえ、と振ると、「えっ、2万円くらいつかないんですか!?」。SGで6コースまくりなのにね。「僕から儲かる方法を考えてくださいよ~」とも言うんだけど、それはなかなか難題だなあ。しかし配当が安いのはファンに認められている証し。胸を張って今節もあと2発くらいはお願いします!

 その菅と、毒島誠がペラ室で会話を交わしていたのがちょっと興味深かった。言うまでもなくスタイルに共通点など見出せない二人だが、菅の戦い方にしっかり興味を示す毒島がさすがだと思った次第。菅のスタイルを取り入れるというわけではないだろうが、ヒントを得ることはできるかもしれず、妙な決めつけをすることなどなく、あるいは認めるところは認めて、接しているということだろう。菅の人懐こいキャラもあるだろうけど。いつか毒島が6コースからギュイーンなんてことがあったら、この日の会話が発端かも!?(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)