BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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優勝戦 私的回顧

46歳のギガ覚醒

12R優勝戦
①白井英治(山口)10
②村松修二(広島)12
③原田幸哉(長崎)09
④石野貴之(大阪)18
⑤篠崎元志(福岡)19
⑥平高奈菜(香川)17

 46歳の天才レーサーが、人気の1・2号艇のど真ん中を一撃で切り裂いた。その光景は、去年の下関マスターズ優勝戦と瓜ふたつ。去年はコンマ11のトップスタートで、今年はさらに早いコンマ09。今節の平均タイミング=コンマ07そのままに、とびっきり質のいい踏み込みで内にプレッシャーを与えたのが勝因のひとつだろう。

 もちろん、勝因はスタートだけでなく、これまた天賦の才と呼ぶべきターンスピードだ。同期では瓜生正義のスピードが常に称賛されてきたが、幸哉のいささか特殊なモンキーターンも別次元の速さを秘めている。私の勝手な見立ては「2期上の守田俊介と双璧のちょい天然系スタート×スピードスター」。今日もそのふたつのファクターが完全に噛み合って、やや出足系統の甘いイン白井を攻め潰した。

 それにしても、マスターズ世代になってからの幸哉の強さはどうだ。2020年の9月・住之江GI~(10月・45歳の誕生日)~11月・津GI~21年4月・下関マスターズ~5月・徳山GI~8月・蒲郡SGメモリアルときて今日は2年連続のSGタイトル奪取! 幸哉と言えば、2002年11月の平和島ダービーから2年弱でSG2冠+GI3冠と大暴れしたものだが、もはや最近の勝ちっぷりは「20年ぶりの完全復活」とお伝えするしかない。いや、もしかしたら、あの20代の頃より強くなっているかも?? なぜこんなミラクルが起きているか、と聞かれれば、こう答えるしかないな。
 私のような凡人に、天才の人生がわかるわけないっしょ!!
 破竹の勢いで、地元・大村グランプリの当確ランプを点した幸哉。半年後に47歳でどこまで艇界の天辺まで近づくことができるか、オッサンファンとして大いに注目するとしよう。

 さてさて、ファイナル予想【②④⑥BOX】で③①⑤を喰らったダメダメオヤジが、幸哉を称賛しても説得力があるはずもなし(号泣)。今シリーズに関する私・畠山の個人的な感想を記しておきたい。一言でいうと、こうなる。

『めっちゃくちゃ面白かった!!』

 古い読者なら分かっていると思うのだが、5年ほど前までの私は【枠なり3対3⇔イン逃げラッシュ】という趨勢にうんざりしていた。特にSGなど記念戦線でどんどんこのイン天国化の傾向が強まり、「間もなく、節間72レースすべて枠なり3対3、すべてイン逃げというSGも出現するだろう。そのシリーズに選手の個性は1ミリも介在しない」などと厭世的な文言に終始したものだった。
 で、その傾向はほとんど現在も変わっていないのだけど、私自身は「全国で開催している全レースの中から、非枠なり×インがぶっ飛びそうなレースだけを選択して穴舟券を買う」という舟券生活で、内的ストレスを溜めないように心がけている(笑)。

 それが……今年の宮島オールスターは初日から最終日までストレスゼロ! 日々、私が全国からチョイスしている理想的なワクワク番組が、このシリーズだけで何十レースも存在したのだ。私のワクワクは、今節のデータでも証明できる。

★今節データ
枠なり3636非枠なり!!
 枠なり時のインコース24勝12敗(イン1着率67%)
 非枠なり時のインコース18勝18敗(イン1着率50%)

 なんと、枠なりじゃないレースがジャスト半数、全72レースの50%!! 過去のデータは取ってないけど、体感的に【枠なり=非枠なり】などというSGは、ここ10年で皆無だった気がしてならない。もちろん、その要因は読者もうっすら把握しているだろう。

★西島義則、深川真二、江口晃生の「前付け怪獣」のみならず、隙あらば外枠からコースを奪いに行く選手が鈴なりだった。
★逆に内コースに頓着せず、伸びを追及する菅章哉、藤山翔大、高田ひかるの『まくり怪獣』など、「前付け艇を入れて外からまくる」という展開を選んだ選手が多かった。
★オール女子戦で枠なりに慣れた女子レーサーが多数参戦し、それに対してピットアウトから攻めたてるケースも目立った。
 これらの要因がうまい具合に絡み合って、今節は待機行動から出入りの激しい混戦模様に。極端な起こしの凸凹も発生し、センター筋の空中戦や一撃まくり決着などが近年のSGとは思えないほど多発した。

 進入争いだけでなく、實森美祐53号機や平高奈菜21号機が強烈なパワーとともに何度も穴を提供しつつ、予選突破。大村クラシックの遠藤エミに続いて、機力さえ十分ならSGでも男子と互角以上に戦えることを証明してみせた。もちろん、エミの優勝によって女子レーサーの意識が一気に底上げされた、という見方もできるだろう。
 そんなこんなで初日からスリリングな激戦がてんこ盛りだったわけだが、もっとも重要なのは「これらスリリングなレースを魅せてくれるレーサーを選んだのは、ファンの人々だ」という部分だろう。ファンのひとりひとりは別個の思いで出場してほしい選手を選んだのに、全国のファンの総意としてめちゃくちゃ面白いメンバーが選抜された。その個性的なレーサーたちが、ファンの期待に応えるべく自分らしいレースに徹したら、めっちゃくちゃ面白い6日間が完成したわけだ。

 まあ、私とは逆に「今まで通り枠なり3対3が多くて、全レース①アタマの鉄板で勝負できるSGが理想」という人には不向きなシリーズだったかも知れないが、それは勘弁していただきたい。全国のファンが総意として、それらの趨勢に「否」の判定を下したのだから。
 私個人としては、こんな面白いSGを“演出”してくれた全国のファンに御礼の言葉をお伝えしたい。
――ピットアウトから目が離せない個性派レーサーを選んでくれて、ありがとう。来年もまた、皆さんの総意によって今年のような素敵な52人が集まりますように!(photos/シギー中尾、text/畠山)