SGクラスはゴマンといるし、全員がA級というGⅡレベルの斡旋だし、一般戦とはいえメンバーは実に豪華なバトルトーナメント。だが、そういうメンツが揃っているからこそ、一般戦らしいというか、お祭りレースらしいというか、前検が穏やかな空気に包まれていることをヒシヒシと感じるわけである。もう8回目の開催となるわけだが、毎度毎度、新鮮な感慨を覚える。そして、こういう空気でありながら、枠番はオール抽選で一発勝負の勝ち上がり方式という過酷な戦いがそこにあるわけだから、バトルトーナメントは素敵なのだと改めて思うわけである。たとえば、水面から上がってくれば難しい顔を見せることが多い白井英治が、SGに比べれば柔らかい表情に見えていて、しかしその後の動きはSGと何も変わらないというのが、その象徴と言えようか。
ただし、やはり前検を走った手応えで醸し出す空気も変わってくるというのは、レースのグレードにかかわらず、選手たちの本能的な部分によるものだろう。森高一真が引いた24号機は評価が高いモーターで、その通りの感触はあったのだろう、前検を走ったあとはかなり余裕のありそうなたたずまいなのであった。記者席への帰り際、前検中に突如降り出した豪雨が濡らした路面を歩いていたら、「クロちゃん、転ぶぞ!」と背中から森高の大声が。もともと優しい男ではあるのだが、危なっかしい足取りのオッサンを気遣う余裕があったりするわけだ。
一方、地元戦だというのにD評価のモーターを引いてしまった西山貴浩は、やはりどことなく不機嫌に見える。本体整備も視野に入れて、すでに整備士にも相談したそうだが、何しろ3日間の短期決戦、立て直しの時間が少ないということも気がかりではあろう。昨年のオールスターで凡機を引いたときに見えたような焦燥感は、やはりSGと一般戦の違いというべきであろう、そこまで見えないが、しかし地元で感触の悪いモーターを引いてしまえば気分が上がるわけはないのである。それでも、エンジン吊りを手伝った後輩に礼を言われれば「おぅ、お疲れぇ!」と声を張り上げ、報道陣の前でもおどけてみせるなど、彼らしさも発揮はしており、なかなかたいした男だと感服もするわけである。
噂の7号機を引いた野口勝弘は、なにしろ初対面なので、普段との様子の対比はできないわけで、傍目からはほとんど何も読み取れなかった。これだけの注目が集まる舞台で、絶対的なエース機を引いたことは、名前を売る大チャンス! 相手が相手なだけにプレッシャーもあるかと思われるのだが、それもまた特には感じ取れない前検日であった。エース機とはいえ舟券に絡めば跳ねるであろう6号艇。うむ、個人的にはおおいに頑張ってもらいたいですね。
個人的に頑張ってもらいたいといえば、金児隆太! 我が信州の期待の星である! 顔を合わせるのは、たしか20年2月の津レディースvsルーキーズ以来。前検が終わると、ピットの端っこにいたこちらにさっそく挨拶に来てくれるのだから、嬉しい限りである。今期はA2級だが、来期A1復帰ペースで勝率を稼いでおり、一般戦ながら1点増しの今節はさらに勝率をアップさせてもらいたいところ。明日はとにかく3着までに、と振ると、「いや、アタマ狙っていきます!」と快活に答えた。その意気や良し!
整備関連で言うと、川島圭司が本体を外していた。大きな整備はしていないようだったので、点検程度かも。なにしろ、初戦トーナメントは1号艇をゲット。勝ち上がる大チャンスである。万全を期すべく、やれることはなんでもやる構えか。93期滋賀支部といえば、馬場貴也。現状、同期に差をつけられてしまっているが、ぜひともここでおおいに目立って、その名をアピールしてほしい。なにしろ、ここを優勝して優先出場権を得られるBBCトーナメントの開催地は地元びわこなのだ。すでに出場当確と言える馬場とともに、地元の大舞台に揃い踏みすることを期待しよう。
さてさて、バトルトーナメントといえば、枠番抽選。直接目撃することはできたのだが、廊下から覗く程度しか見えなかったので、表情の多くは見えずじまいでした。
ただ、西山貴浩が騒いでいたのは、山ほど聞こえてきた(笑)。自身が5号艇を引けば嘆き、親愛する大庭元明が6号艇を引けば「さすがポンコツ」と唸り、仲良しの池田浩二や森高一真が5号艇を引けば「さすが!」と野次り、菅章哉が3号艇を引いたあとに山本景士郎が4号艇を引けば「菅をマークしろ!」と作戦を伝授したりと、やはり枠番抽選の主役は西山でありました。
あと、1号艇を引いた選手が意外と淡々としてましたね。西山もあまりイジってなかったし。辻栄蔵あたり、もっとはしゃぐかと思ったりもしたのですが、その意味ではわりと穏やかな枠番抽選なのでありました。(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)