BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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波乱含み!のトーナメント後半ピットから

 イン5勝に終わった一筋縄ではいかない水面。終盤戦では事故も2件。地元の若手・小原聡将と木田峰由季が転覆に散った。幸いに二人とも身体は無事で、ずぶ濡れではあったが、元気よく堤防を駆け下りてきている。心中には落胆もあろうが、まずは明日も復活戦を走れることはよかった。

 その事故に絡むかたちとなった赤岩善生はやはり無念の表情。2マークで引き波にハマるような格好で後退し、追い上げるもセミファイナル圏の3着には届かずだったうえに、転覆艇と接触。実はそれで4着に上がり、復活戦では有利な位置にもなったのだが、それよりも敗れた悔しさのほうが大きいようだった。というか、4着うんぬんなど頭になかったことだろう。だから、枠番抽選で1号艇を引いても顔色ひとつ変えず。トーナメントで勝ち上がれなかった、あるいは勝てなかったことが頭を占めているようだった。

 江戸川を10年以上走っていなかった太田和美は、10Rで5着。2~3番手を激しく争ったが、3着を手にすることはできなかった。道中の旋回の際、やや足をとられるような場面もあって、これが水面ブランクということなのだろうか。疲労困憊の表情で戻ってきた太田には、森高一真がからかうように笑いかけている。それがかえって太田を癒したのだろう、太田も疲れの色は消えなかったものの、ふっと目元を緩めていた。

 そうしたなかで、同じ10R、太田と同期の三嶌誠司が6号艇6コースから2着。見事に勝ち上がってみせた。ピットに戻った三嶌には、同支部の森高が寄り添う。そして微笑を投げかけて、それを見た三嶌はニカッと笑顔を見せたのだった。我々がこうしてピット取材を始めた16、7年前には、この二人がよくSGで揃い踏みし、笑い合っていたものである。当時の三嶌は30代、森高は20代。いまや三嶌は50代半ばで、森高もマスターズ世代である。あの頃を思い出し、なんだか感慨に浸ったワタクシ……。

 11Rでは、田村隆信が6号艇6コースから2着。後輩・島村隆幸の6コースまくりに目を丸くしていた田村だが、自身も6コースをきっちりと克服したかたちだ。12R発走目前、装着場のモニターで観戦しようとあらわれた田村は、こちらに気づいてサムズアップ。「やったよ」とぼそり呟いた。いや、呟いたといっても、その声は実に明るい。大外枠を克服しての勝ち上がりは、田村のテンションを上げたのだろう。しかも! 枠番抽選では1号艇をゲット! 思わず拳を握って笑顔を見せる。「タムさん、さすがですわ~」と後輩に讃えられて、さらに笑みは深くなるのであった。

 そうそう、もともとトーナメント戦はこの大会のみの開催だったが、19年からはボートレースバトルチャンピオントーナメントというプレミアムGⅠが始まって、年間2節のトーナメント戦が設けられている。この2つの大会は、ルールが違う。こちらは枠番はオール抽選だが、BBCのほうは1回戦を逃げれば準々決勝の1号艇か2号艇が約束される。というわけで、12Rを逃げた湯川浩司はこれを混同していたようで、セミファイナルは1号艇か2号艇と思い込んでいたようだ。この大会、初出場ではないのに(笑)。だからセミファイナルがやはり枠番抽選と知ってガッカリ、そして抽選で6号艇を引いて大ガッカリなのであった(笑)。抽選は2番手で「(残った玉は)あんなにあるのに」とブー垂れながら抽選会場を去っていった湯川。いやいや、江戸川は全国で一、二を争う6コース1着率を誇る(といっても4%くらいだけど)。まだまだ諦めるのは早いぞ!

 そう、森高一真も! こちらもセミファイナルは6号艇。会場外から抽選の模様を覗き込んでいたこちらを見つけると「もう済んだわ」とボソリ。選手が「済んだ」「済んでる」と言ったときはようするに、「終わった」「終わってる」の意味。だからさあ、まだ諦めるのは早いってば! 森高は第4回の多摩川大会でもセミファイナルで6号艇を引き、前付け3コースからまくって1着! ファイナルに進んでいるのだ。まあ、江戸川では前付けは現実的ではないが、もともと6コースは下手ではない。大穴あけてくれ! それにしても、銀河系の“団子4兄弟”、よく緑を引くなあ。今日と明日で、荒川健太も含め4人ともが6号艇を引いたのでありました。(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)