BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――お疲れ様でした!

 4R、宮之原輝紀が逃げ切ってSG初勝利。実は今朝、宮之原は泣きを入れていたのである。手応えがとにかく悪いとのことで、「出足がぜんぜんダメなんです。整備が必要だと思う……」。この4Rは江口晃生の前付けが想定されるなか、1号艇に組まれた宮之原。たぶんダメじゃないかと思う……、そんな本音も呟いていたりしたのだ。
 しかし、宮之原は気合で押し切った! スタートを踏み込み、渾身の先マイ。さらには2マークも全速でぶん回し、出足が弱くても問題のないだけの差を広げてみせたのである。お見事! ただ、それでもやはり足色には不安も多く、その後も宮之原は走りまくった。調整、試運転を繰り返し、11R発売中にも水面に下りていって足合わせを走った。その間には、自分の水神祭だったり、新兵仕事だったりと、休む間もなく陸の上でも走り続けた。いやー、ご苦労様! まずは最初の目標=水神祭はクリアできたのだし、なんとか底上げをはかって、次は予選突破を目指してほしい。

 11R発売中に宮之原と足合わせをしていたのは、上條暢嵩だ。上條は2R1回乗りで、レース後はボートごと整備室に持ち込んでの整備を施し、さらに試運転をし、また整備をして、そして試運転へ、の繰り返し。彼もまた、宮之原同様に走り回ったわけである。長い一日だっただろうなあ。陸に上がり、工具袋を整備室に持っていく際、上條は僕の背後から「お疲れ様っす~」と声をかけてきた。いやいや、お疲れ様はあなたのほうでしょ! 上條はなははとばかりに笑ったのだが、その表情には確実に疲れが見えた。まだ20代で体力はあるだろうが、これだけ休みなく働けば疲労もマックスでしょう。本当にお疲れ様。この苦労が報われることを願います。

 さて、今日は水神祭ラッシュだったわけだが、7Rで勝った柳生泰二は、とにかく嬉しそうな笑顔を振りまいていた。水神祭のあと、JLCのインタビューに応えて「幸せです」と語っており、たしかにレース後の様子には多幸感が漂っていたものだ。中四国地区の面々に祝福されたときもそうだが、他地区の先輩である菊地孝平にカポックをぽーんと叩かれたときには、実に笑顔が濃くなっていた。デビュー17年で辿り着いたこの舞台。そこであげた初白星は、格別なものに違いない。

 そうそう、菊地孝平といえば、6Rで落水した秋山直之を気遣いつつも、その原因を作ったとして不良航法をとられた大上卓人に対しても、肩を抱いて慰めていた。先輩を落としてしまったこと、減点をとられたこと、すべてに対して落胆していた大上。もちろん、反省すべき点はあるとわかりつつも、前を向くように菊地は促したわけだ。優しい先輩である。その心をくみ取って、大上も秋山も明日からも頑張れ!

 9Rでは塩田北斗がSG初勝利。20年グランプリシリーズでSG初出場を果たしているが、凡機に苦しみ勝ち星はあげられず。日々調整に明け暮れ、しかし一度も舟券に絡むことができず、苦しんでいた様子はよく覚えている。それだけに、この勝利はなんだか嬉しい! 塩田はといえば、ホッとしたように柔らかい表情を見せていた。瓜生正義に「北斗、おめでとう!」と祝福されて、頭を下げる様子が実に清々しかったですね。

 その水神祭の際、最後にカメラマンにガッツポーズを要求されて応えていた塩田なのだが、10人ほどのカメラマンが次々と目線を求めるので、ちょっとした撮影会状態に。そこに通りかかったのが、展示の準備に向かおうとしていた松井繁。その様子を見るや、松井は自分が写り込んではあかんやろ、とばかりに立ち止まって撮影が終わるのを待機。それから4~5人のカメラマンの撮影がさらに続いたのだが、松井は黙ってその場にとどまるのであった。ようやく撮影が終了すると、表情も変えず係留所への渡り橋を降りていった松井。王者を待たせたらあかんやろ! ということで、中尾を叱っておくので、許してね、王者様!

 さてさて、帰宿の1便は10R終了後に出発。といっても宿舎はピットに隣接していて、装着場からも玄関が見えるほどの至近距離である。徒歩30秒くらいかしらん。ちゃんと計ったわけじゃないけど。というわけで、集合場所は装着場の検査員室前。アナウンスがかかると、次々に通勤着に着替えた選手があらわれ、2列に整然と整列するのであった。だいたい20名くらい? ちゃんと数えたわけじゃないけど。なお、ちょうどこのころ、上條と宮之原が足合わせをしていたわけであります。

 管理係の方の合図で、一斉に宿舎に向かって歩き出す1便組の選手たち。今日は午後から日差しが出て、ピットは汗ばむくらいだった。そのなかの作業やレースは、疲れを増幅させたはず。みなさん、お疲れ様でした! ゆっくり疲れを癒して、明日も最高のパフォーマンスを!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)