BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――ニコニコの理由

 高田ひかるの水神祭は別記事でアップしたわけだが、9Rは4コースから5着だった。敗因はスタート。4カドでコンマ23はやはり悔しいし、両隣がコンマ12、コンマ09では出番がなかった。ピットに引き上げてきた高田は、うつむいて顔面蒼白。スタートの時点でしくじったわけだから、不完全燃焼もここに極まれりであったはずだ。水神祭は10R発売中。このあとに控えていたのだ。心躍る儀式の前に、高田は痛恨を味わい、落胆した。もしかしたらそのときは水神祭の気分ではなかったかも。

 水神祭ではファンに笑顔を振りまいていた高田だが、そこから気分を立て直してレスキューに乗ったのだ。決して負けた直後にただニコニコしていたわけではないのである。ちなみに、顔が引きつる高田に笑顔を取り戻させたのは菊地孝平だったと思う。10Rの展示から戻ってきたときに、装備を解いていた高田を見つけ「水神祭おめでとう! 俺は参加できないけど!」と大声を放ったのだ。レース本番待機ということで、一緒にレスキューに乗っかるわけにはいかない。でも同地区の先輩として、SG初勝利を称えている、ということを伝えたわけだ。それが高田が気持ちを切り替えた瞬間だったかも。

 その菊地が2着だった10Rは、原田幸哉が逃走を決めた。秦英悟の攻め、菊地のまくり差しを振り切っての逃げ切り勝ち。ピットにあがって、すぐさまヘルメットを頭の上にあげると、ニコニコっ。嬉しそうに頬が緩んだのだった。エンジン吊りを終え、菊地と合流するとまたまたニコニコっ。レースを振り返り合いながら、二人とも柔らかに笑い続けるのだった。菊地は目が笑っていないようにも見えたが、勘ぐりすぎ?

 その原田が、カポック脱ぎ場へと戻りながらもやけに後ろを気にしていた。何度も何度も振り返り、誰かを探すような目線の動き。原田が探していたのは松井繁だった。このレース4着。遅れてエンジン吊りを終えていた松井が原田菊地コンビに近づいたあたりで、原田は菊地を先に行かせて松井と合流。今度はふっと真顔になって、言葉を交わし合っていたのだった。それにしても、原田と松井は実に仲が良く、今節もすでに何度か話し込んでいるのを見かけている。どちらかといえば、原田が松井を慕っているという感じか。松井も原田を認めているのだろう、王者のほうから原田に声をかけていくのも珍しくない。07年のオールスター優勝戦を覚えているファンなら、ちょっと不思議かも?

 初日の戦いを終えて、整備に取り組み始めた選手もちらほらと。地元の上平真二が6R後に本体整備。いったんは先頭に立っているのだが、菊地に差し返されての2着だった。やはり不満が残る一戦だったか。地元だけに整備のツボは心得ていると思われる。

 9Rで濱野谷憲吾のジカまくりを浴びた田村隆信も本体をバラした。スタートで後手を踏んでの大敗だが、単にタイミングがズレただけではなかったのかも。1号艇で6着という痛恨の結果は、早々に立て直さなければと田村を急かすこととなったか。

 そのレースで4着の羽野直也も整備をしていた。濱野谷の右隣り3コースで、展開は向いたはずなのだが、差せなかった。前半も大きな着を獲っており、改善の必要を感じたのだろう。羽野の本体整備はけっこう珍しく、SGではあまり見た記憶がない。その効果があるやなしや、明日のレースでは注視してみたい。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)