1R発売中に白井英治がボートを下ろしていたのには驚いた。今節は早めの始動が目立っている白井だが、この段階で着水し、試運転をしたのは今日が初めて(のはず)。もともと始動は遅いタイプで、たとえば18年の地元徳山グラチャン優勝戦の朝も2R頃になってようやくプロペラを装着していたはずだ(優勝戦1号艇)。仕上がりがいい場合はそれが白井のルーティンであって、だから今節の動き出しの早さは特別なもの。今日はさらにそこに拍車がかかっているのだから、白井のなかで今日は特別のなかのさらに特別な一日になっている。2R発売中にボートをいったんあげて、足合わせをしていた原田篤志とともに控室へと消えていった。まずこの段階での確認を済ませて、次の調整ステップに入っていくことになろう。
序盤の時間帯でボートを下ろしていたのは白井のみ。ただし、優勝戦組全員をエンジン吊りだけでなく、何らかの形で目撃はしている。原田幸哉はプロペラ室。地元での大一番に向けて、着々と準備を整えている。片岡雅裕も同様。ただ、本格的な調整というよりは、ゲージを当てての確認作業といった雰囲気であった。また、深谷知博もペラ室に入っていくところを見たが、やはり本格的な調整を始めた様子はなく、その後もボート周りの点検なども行なっていた。
馬場貴也はリードバルブを外して整備室へ。いわゆる外回りの整備で、パワーアップうんぬんというよりは、優勝戦に向けて抜かりなく、緩めることなく確認すべき部分をチェックしているといった趣きだろう。とにもかくにも、賞金ランクトップの責任は果たし、また6号艇という立場もあってか、昨日までよりもかなりリラックスしている雰囲気である。優勝戦に向けていったん精神的にリセットできたとするなら、このうえないポジティブな状況だと思う。
磯部誠は、昨日施した本体整備が奏功したと言い、今日もやるのだと宣言していた。その通りに、1R発売中に本体をバラし始め、予定をきっちり遂行していた。部品交換というわけではないとのことなので、まさに微細な部分を煮詰める作業。それが優出につながる仕上がりをもたらしたと考えれば、これは成功体験に基づく、気持ちのほうを整える整備であるとも思う。SG初優出がグランプリという特別な体験を、磯部は悔いなく戦うべく、機力も気力も万全にもっていこうとしているのだ。
シリーズ組のほうがむしろなかなか姿を見ない選手が多く、目立っていたのは宮地元輝が2R発売中にボートを下ろした程度。つまり、シリーズ組でいちばん早く始動したのが宮地だということになろうか。
それでも、石野貴之も早くから着水の準備をしていたし、毒島誠もカポックをボートの前方カウルの上に置いて、いつでも水面に飛び出せそうな雰囲気。早い段階で水面にその姿を見ることになるだろう。
これを書いている現在、水面はかなり雪が降っております! 雪のグランプリになるのか!? ともかくピットのほうは着々とフィナーレに向けて空気が出来上がりつつあります!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)