BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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優勝戦 私的回顧

いいひと。

12R優勝戦
①長嶋万記(静岡) 05
②高田ひかる(三重)10
③田口節子(岡山) 09
④鎌倉 涼(大阪) 12
⑤大山千広(福岡) 10
⑥宇野弥生(愛知) 09

 ガバシマ万記が41歳にして、人生初の記念タイトルを手に入れた。これまでGI優出4回、GⅡは9回目のファイナルアタックでの悲願成就。予想では◎を打たなかったけれど、心の底から祝福しちゃいます。おめでとう、万記ちゃん!!

 勝因はいくつも考えられるが、もっと直截的な要因はスタートだろう。昨日の準優はコンマ08で、今日はさらに踏み込んだコンマ05。怖い怖いまくり怪獣ヒカルをスリットで1/3艇身ほど出し抜き、ジカまくりの威力を半減させた。スリット同体だったらもっと怪獣退治に手を焼き、その間に田口のズボ差しを喰らった可能性はかなり高かったとおもう。

 次なる勝因は、相棒33号機とのマッチング。今日の1マーク、ジカまくりの高田をブロックして旋回した直後、同じく抜群パワー田口が鋭角差しを突き入れた。勢い的にはまんま万記を貫いて不思議のない押し足だったが、出口からの万記の加速感ときたらもう! 私は万記、田口の両方に「出足S」を授けていたが、あのバック直線では万記のそれに一日の長があると実感させた。

 ちなみにこの33号機、「まったくの凡機だったのが、前節の庄司樹良々がギヤケースとバルブをやってから大化けした」と地元の記者さんから聞かされたが、その前の乗り手が万記の兄貴分とも呼ぶべき菊地孝平。優勝はできなかったものの、30%ちょいの凡機を地味に調整した労苦が万記の背中を押した気がしてならない。

 さてさて、長嶋万記という名を聞いて、私が真っ先にイメージする言葉は「いいひと」だ。かつて『BOATBoy』編集部主催でファンと選手の交流会みたいのを開催した時、あれこれ率先して協力してくれだのが万記だった。会場で甲斐甲斐しく動き回るわ、読者プレゼントをあれこれ持ってきてくれるわ、ゲストとして誘ったはずが誰よりも主催者然としていた。もちろん、最初の挨拶から別れの挨拶まで、すべて爽やかな笑顔のままで。

 こ、このひと、いいひとすぎるかも!?
 正直、そう思いましたよ。で、あるいは多くのファンも、万記に関して同じような印象を抱いているのではないか。いつでもどこでも、どんなインタビューでも元気で笑顔で真っすぐで、「すべての人々を楽しい気持ちにさせたい」という笑顔が半端ないから。で、こんなことを思ったのも、きっと私だけではないはずだ。
 いいひと過ぎるから、大きいタイトルを獲れないのでは?
 と。勝負事に弱い人たちは、あらかた「いいひと」であることが多い。自分のことより他人の幸せとか喜びとかを率先して考えるから。野心メラメラ、私だけが強くなれればいい、みたいな肉食系の性格とは真逆なタイプが多いから。今日の万記もレース後は自分の嬉し涙よりも、遅くまで残ってくれたファンを楽しませることに専念していた。

 いいひとだなぁ。いいひとすぎる。
 コスプレで笑顔を振りまく万記を見ながら、私は今日もいままでと同じことを思う。ただ、昨日と今日とでまったく違う思いを抱いたりもする。
 いいひと過ぎるくらいいいひとでも、激辛の勝負の世界でテッペンに立つことができるんだなぁ。
 おめでとう、万記さん。これからもいいひとのまま、トップ級の女子レーサーとして活躍してください。やればできる、ことを証明できたのだから(笑)。
(photos/チャーリー池上、text/畠山)