BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

W優勝戦 私的回顧

大波乱

11R 並び順
①渡邉優美(福岡)14
⑥落合直子(大阪)18
②金田幸子(岡山)16
③西岡成美(徳島)07
④清埜翔子(埼玉)04
⑤宇野弥生(愛知)09

 3連単500倍超。掛け値なしの大波乱だ。この引き鉄となったのは、もちろん落合の前付けであり、さらには金田のピット離れだったか。ピットアウトから完全に立ち遅れた金田は、大回りでスロー水域にカムバック。その間に地元の落合が潜り込み、最終隊形は162/345。スタート展示と同じ並びだが、金田の挙動で内3艇が深めの横並びになった。

 4カド・ナルミンに絶好の隊形じゃん!!
 ③アタマをしこたま買っていた私はほくそ笑んだし、全国津々浦々のナルミン族も同じ思いだったはず。深い3艇の外から、西岡がぐんぐん伸びて行く。スリットの手前でカド受けの金田を追い抜いた瞬間、私は「よっしゃ、行ったーー!」と叫んでいた。ピット離れのもつれがあったからこその極端なスリット隊形。成美のまくりは確定的で、残る脅威は外2艇のマーク差し。そう確信しながら叫んでいた。

 だがしかし、そこからの金田の伸び返しの素晴らしいこと! 舳先ひとつで西岡に食らいつき、そのままグイグイ舳先を突っ込んでまくり怪獣・ナルミンの快進撃は終わった。もちろん、身体を張って受け止めた金田も無傷ではいられずバランスを逸して転覆……みはや、この時点で大波乱は確定したと言っていいだろう。
 ズバズボバッキューーン!!(by児島の椛島アナ)

 そんな轟音が聞こえるような勢いで、外から清埜が宇野が差し抜けて行く。そこに小回りで残した落合も加わり、まかり間違えば1000倍を超える外枠トリオの進撃。2マークでは落合が振り込み、最終的に6コースの宇野が先頭に立つ光景を、私はあんぐり口を開けて見つめていた。

 今節は6コースの1着がなかった住之江のゴールを、宇野弥生が真っ先に通過した。結果的には、男女混合のGⅡを制した女傑の貫禄の勝利、というところか。今節の弥生の平均スタートはコンマ10。豪快なまくり勝ちもあって、まさに「私らしい」シリーズだったとお伝えしておこう。

返り討ち

12R優勝戦 並び順
①平高奈菜(香川)06
②田口節子(岡山)09
③守屋美穂(岡山)08
⑤遠藤エミ(滋賀)19
⑥長嶋万記(静岡)23
④平山智加(香川)19

 やれば、できるっ!!
 銀河の絶対女王が、去年に続いて白銀のティアラを戴冠した。
 去年は2コース・ジカまくり、今年は2コースぶっ差し。去年に続いて1号艇の平高はコンマ06、トップタイミングで1マークに向かったが、無慈悲な返り討ちを浴びる結果となった。一度ならず二度のインコース敗退。その悔しさがどれほどか、私には想像さえできない。

「朝の特訓で内に入ったらワクワクした」長嶋が、公言通りの前付けに。スタート展示は誰も受け入れず枠なりオールスローだったが、いざ本番では讃岐の勝負師・平山がタイトな隊列から飛び出した。12356/4で内5艇がずんずん前に流れて行く。
「よっしゃ、ヒラヤマァァ、行ったれぇぇ!」
「ヒラタカァァ、しっかり行けやぁぁ!」
「モリヤーーーーお前なら行けるっ!!」
 例によって、2マーク側のスタンドは声、声、声でしっゃかめっちゃかだ。

 12秒針が回る。起こし位置は内4艇が100m、遠藤が130m。ダッシュの平山から進軍がはじまったが、スリット隊形はやや立ち遅れ。逆にゼロ台まで踏み込んだ内3艇が、完全に主導権を握った。とりわけスリットからじんわり出て行ったのは、3コースの守屋だ。

 インの平高はこの守屋を警戒しすぎたか、それとも去年のジカまくりの残像が脳裏をよぎったか……守屋を張り倒すようなインモンキーは外へ外へと流れ、それを目視した田口が冷徹な小回り差しを突き入れる。外に流れつつ態勢を立て直した平高とは僅差の差しではあったが、内に舳先を入れたアドバンテージはでかい。そのまま2マークを先取りして、2年連続のクイーン就任を決定づけた。40歳を超えてからの連覇は、「天晴れ」より「流石」と言うべか。不惑を超えて、円熟の強さを魅せる現役クイーン。
『女王のプライドが輝き出す』
 今節のキャッチコピーは、田口節子にこそ相応しいものでもあった。(photos/シギー中尾、text/畠山)