BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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準優ダイジェスト

思いクラッシュ!!

9R
①川野芽唯(福岡)13
②守屋美穂(岡山)09
③田口節子(岡山)10
④松本晶恵(群馬)15
⑤山下友貴(静岡)19
⑥宇野弥生(愛知)09

 ファン投票1位なのにパワー劣勢な守屋の「勝ちたい思い」が大波乱を呼び込んだ。スリット隊形は↑御覧のとおり、内の川野より舳先ひとつ突き出した程度。直進して川野にプレッシャーをかけつつ、「先に行かせての差し」が最善の隊形ではあった。

 だがしかし、勝負根性が半端ない守屋の選択はジカまくり。じわり内に舳先を寄せ、差すべきマイシロも捨て、獲物に襲い掛かるハゲタカのように大上段から覆いかぶさっていく。
 ただ、1マークまでの行き足は川野がやや勝っていたか。ツケマイを浴びたら一貫の終わり、わずかな伸び返しを頼りに捨て身で艇を併せに行く。もう引くに引けない守屋は、握りっぱなしで応戦する。1マークの頂点でなんとか川野を引き波にハメることができたが、迎撃ミサイルを浴びた我が身に前進するだけの余力はなかった。

 この大競りを横目に、バックで突き抜けたのは3コースの田口。スリット直後は「まくる気マンマン」~1マーク手前は「2コースがまくってビックリ、初動が遅れた」らしいが、それでも機敏に差しハンドルを入れてひとり旅に持ち込んだ。展開一本の勝利とはいえ、今日も出口から軽快なレース足だった。

 で、波乱の立役者となったのが、地元で気合パンパンの宇野だ。アウト6コースから私らしくゼロ台スタートをぶっ込み、凹んだ山下を叩いて全速のまくり差し。その前方の紛争が作り出した広い空間のど真ん中=ファイナルへの花道を素晴らしいスピードで突き抜けた。こちらも展開さまさまの2着だが、私らしい踏み込みがあってこそ。天晴れの6コース優出と絶賛しておきたい。
 守屋の勝ちたい思いと、川野のまくられたくない思い。「水上の格闘技」という言葉は、何かとスマートな現代ボートレースであっても死語になることはない。

消化不良の逃げ

10R
①長嶋万記(静岡)  08
②渡邉優美(福岡)    12
③鎌倉 涼(大阪)    13
④大瀧明日香(愛知)18
⑤出口舞有子(愛知)17
⑥中村桃佳(香川)    09

 インコース長嶋がゼロ台まで踏み込み、他艇の追撃を抑えて逃げきった。ただ、私の脳内レースよりもかなり危なっかしい、ギリギリの逃げではあった。一の矢は渡邉の2コース差し。レース直前に斜め向かい風→ぴったり右横風に変わった影響もあったか、万記のちょいと初動の怪しいインモンキーが風で流れている間に、優美の舳先がわずかながら万記の内に突き刺さったように見えた。

 ただ、スリット裏からの伸び足は万記が優勢で、あっという間に振りほどく。これで勝負あったと見えた2マーク、今度はバック3番手から渾身の差しを入れた鎌倉の舳先が一瞬だけ突き刺さった。ここで鎌倉の出足が抜群レベルなら大逆転もありえたが、引き波でバウンドしてあえなく失速。二の矢も振り払った万記が、やっとこさ後続を突き放して3番目のファイナルチケットを入手した。

 混戦の2着争いから抜け出したのは、2マークで素晴らしいハンドルワークを魅せた鎌倉。その2マークで非力な一面も披露したが、天性のターンスピードとSGで揉まれた経験則をフル稼働して後続を振り切った。ファイナルではさらに劣勢を強いられる可能性が高いが、次元の高い走りっぷりは1ミリたりとも軽視できない。

スリットの氾濫

11R
①遠藤エミ(滋賀) 16
②平高奈菜(香川) 28
③高田ひかる(三重)09
④大山千広(福岡) 14
⑤前田紗希(埼玉) 14
⑥倉持莉々(東京) 15

 3カドまくり怪獣ヒカルが、一撃でジャイアントキリングをやらかした。いやぁ、この勝因をひとつだけ挙げるなら、いつもの「伸び足」ではなく「スタート勝ち」。これに尽きる。

 昨日からひかる◎を決め込んでいた私だが、実は8R後のスタート特訓から諦めムードだった。3カドからあまり出て行かない、と言うより、内の遠藤・平高の行き足~伸び返しが半端ない見え方だったから。風も斜め向かい→流れやすい右横に変わり、スタート展示もやっぱり伸びきれず、展示タイムもエミとわずかコンマ04差……この程度では、スタート同体の全速でも届きようがない。

 こりゃ最強女史の圧勝だわ。
 こんな気分で12秒針を見つめていたらば、↑御覧のとおりの超凸凹スリット隊形に。ぴったり1艇身のエミはともかく、おそらく全速を意識しすぎたであろう平高はエミよりさらに1艇身近く後手を踏んだからさあ大変。気合でコンマゼロ台まで踏み込んだひかるは姿かたちのない2コースを横切り、己の加速を引き波でロスすることもなく、軽々と大本命の遠藤を呑み込んだ。

 繰り返して言うが、今日のひかるはパワー勝ちではなく、完全なスタート勝ちだった。2号艇の明日、同じようなスリット隊形になる可能性は低いはずで、ひかるとしてはどんな方向に持っていくか、なかなかに難しい調整になるかも知れない。

 そしてそして、最後のファイナル切符をGETしたのは、長期休養明けでパワー的にもアドバンテージのない千広! 自力駆け・高田にぴったり連動しただけの展開に恵まれた2着ではあったが、4カ月のブランクを克服して「準優4号艇」という椅子を取りきったからこその2着。節間を通じてコンマ10前後を貫いたスタート力も含め、「やっぱモノが違うわ」とただただ感服するしかない。(photos/チャーリー池上、text/畠山)