BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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優勝戦 私的回顧

既視感と違和感

12R優勝戦
①井口佳典(三重) 16
②濱野谷憲吾(東京)16
③中澤和志(埼玉) 21
④瓜生正義(福岡) 17
⑤魚谷智之(兵庫) 16
⑥今垣光太郎(福井)18

 4月からフライングの罰則が厳しくなり(この優勝戦で切ると1年間のGIがアウト!)、スタートの凹凸が生まれるのではないか。などとゲスの勘繰りをしていたらば、6人全員が無理しないレベルでほぼ横一線に。
 さすが6人合わせてSG35Vのツワモノどもよ、見事なまでの意思統一じゃないか。
 などと感心する間もなく、ツワモノどのが1マークを旋回する。もちろん、この隊形で圧倒的な優位に立った井口が豪快なインモンキー。そこに、スタートでわずかに凹んでいた中澤がパワフルなツケマイで襲い掛かる。迫力満点の攻防。

 さらに、私が◎を打った魚谷が凄まじいスピードのまくり差しハンドルを突っ込んだ。脳汁ダダ漏れの全速旋回だったが、現実には魚谷の舳先は突っ込みきれなかった。ちょっとした競りになった井口40号機と中澤29号機が、まったく流れず前に突き進んだから。彼らがそんじょそこらの中堅パワーなら、おそらく魚谷がスコーーンと突き抜けたはずだ。もっとしょーもないタラレバを言うなら、昨日ほどのホーム追い風が吹いていても、魚谷52号機のまくり差しが届いた気がしてならない。

 つまり、このシリーズは井口佳典が優勝すべくして優勝する大会だった。
 魚谷のまくり差しを完封し、中澤の猛攻を防ぎきり、2マークで独走状態に持ち込む銀河戦士を眺めながら、私はそんな当たり前のことを思った。それから、こうも思った。
 強い男が、ちょいと場違いなステージで完全復帰したなぁ。
 もう前検から1週間も見続けたから見慣れたはずだが、やはり井口佳典が45歳になって、マスターズの舞台にいるというのは違和感しかない。1999年の秋、黒須田の運転する車で本栖訓練所に行って85期の卒業式を見たとき、両の目をギラッギラに光らせていた若者がいた。記憶力が黒須田の10分の1もない私でも、そのギラッギラの目をはっきり覚えている。当時38歳だった私が、61歳になったいまも。

 で、23年がたった今日も彼の目はギラッギラだから、とても45歳とは思えない。思えないのに、大ベテランの祭典の頂点に立っている。とてつもない違和感。こうして来年も再来年も同じような違和感を覚えながら、私自身はどんどん老いぼれていくのだろう。
 ぼんやりと、そんなことを考えながら煌びやかな打ち上げ花火を見ていた。
              ★
 ここからは余談の領域だが、今年の大会の総括としては「荒れて荒れて荒れまくった!」がぴったりだろう。どんだけ荒れたか、記念としてここにいくつかの驚愕データを書き留めておきたい。

大荒れ若松マスターズ2023の記録

★イン32勝/72レース
★イン1着率44%
 枠なり時イン43戦25勝=1着率58%
 非枠なり時イン29戦7勝=1着率24%!!
★万舟28発/72レース
★万舟率39%!!
★インが負けたときの主な決まり手
 まくり15/まくり差し10/差し5

 うーーーーん、まさにサプライズ! ちゃんと調べてないけど、直近10年のビッグレースで断トツの大波乱シリーズだと思うぞ。で、これだけ凄まじく荒れた主な要因としては「節間を通じて強風が吹き荒れ、イン選手や2コースの立ち遅れが目立った」と「イン屋・前付け屋がゴリゴリ攻めたてた」の2点が考えられるが、まあそんな能書きは無粋というものか。
――個性豊かなベテランが一堂に集うマスターズチャンピオンは、前付け&まくりが乱舞するスリリングな大会になりやすい。
 こう肝に銘じ、来年もせっせと穴舟券を買い漁りたい。うん、来年こそは絶対に万舟を10本くらい獲ったるどーーー!!(号泣)
(photos/シギー中尾、text/畠山)