BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――痛恨の……

 必勝のイン戦のはずが、無念の6着。地元から唯一参戦した三重女子のエース・高田ひかるが終戦となった。6着だから、戻る先は係留所。そこで長嶋万記と山下友貴が出迎え、長嶋は高田に軽くうなずいて見せて、係留所へと迎え入れた。検査員さんの話によれば、長嶋は「お帰り」と声をかけたそうである。高田がどんな思いでピットに帰って来たのか、選手なら誰でも理解するだろう。地元単独参戦。ドリーム戦出走。双肩にのしかかる大きな期待。予選突破は許されないと自らに課したであろうノルマ。勝負駆けは1号艇。そうしたなかで最後方を走らなければならなかった、あるいは1マークで川野芽唯のツケマイを許してしまったことが、どんな感情を高田にもたらすか、選手はもちろん、我々だって想像がつくことだ。

 高田は神妙な顔つきでカポック脱ぎ場に向かい、装備をほどくと整備室へと向かった。モーター格納のためではない。リプレイを整備室で見ようとしたのだ。しかも、なるべく人目につかないように、ということなのか、整備士さんの控室の前にしゃがみ込んで、ひとり静かにモニターを見つめていた。整備士さんたちも声をかけられない。たまたま近くでギヤケース調整をしていた落合直子も。モニターは他にもたくさんあるのに、あえてそこを選んだのは、やはり人目を避けたとしか思えない。
 高田はモーター格納作業に移ることなく、その後は控室に消えた。その固まり切った表情は、ちょっと正視するのがつらかった。待ちに待った地元レディースチャンピオンは、高田にとって最高につらいものとなってしまった……。

 アーッ! ピットに悲鳴が轟いたのは10Rのゴール。3着争いが、先行する向井美鈴と追う長嶋万記で大接戦となったのだ。モニターを見ていただけでは判断するのが難しいほどの僅差で、やがてモニターには「ゴール判定中」の文字が浮かび上がった。
 このレース、長嶋は4着で6・00だったが、その次点で21位まで6・00が並んでおり、できれば3着6・33でフィニッシュしたいところ。それを把握していたかどうか、道中4番手だった長嶋は、3周2マークで渾身の差し! これが一気に舳先を届かせて、ゴール超接戦となったのだった。
 エンジン吊りのためボートリフトに向かう選手たちは、口々に「どっち?」と声に出して結果の行方を気にしていた。なかには「長い」という声も。そう、写真判定はけっこう長い時間を要しており、なかなか着順決定が出なかったのだ。だから「同着?」という声も聞かれた。長い写真判定のときって、往々にしてありますよね。

 ようやく、着順がモニターに表示され、待たされていた選手たちも覗き込むと、①④③の順。長嶋が4着と判明して、「ああぁ~~~」と残念がる溜息が巻き起こっていた。長嶋を応援していた面々だろう。
 その長嶋、ピットに戻ると意外にも笑顔で、仲間に腿をパチンと叩いて残念がるポーズを見せていた。負けはしたが、最後の差しにはやはり手応えがあったか。そして、得点率6・00組のなかでは、長嶋は最上位。この次点では18位に踏みとどまっている。長嶋は少しばかりの冷や汗とともに、残る2つのレースの結果を待つこととなった。

 なんとかしのぎ切って3着を確保した向井美鈴は、逃げ切った中村桃佳とともに笑顔で控室へと引き上げていっている。こちらはまさに薄氷の3着だったから、それに対しての笑顔という意味もあったと思われる。実は勝てば予選トップが確定していたのだが、そのことへの思いはうかがえないレース後であった。

 この時点では得点率トップだった清埜翔子は、こちらももちろん勝てばトップ通過確定だったが、やはり6号艇は遠かった。無念の6着で、順位を大きく下げることになってしまっている。清埜自身、当然意識はあっただろう、レース後はやはり落胆する様子、しかしそれを押し隠そうと淡々と振る舞う雰囲気が見えていた。準優は当確なのだから、ここは切り替えて準優で強気のまくりを見せてもらいたいですね。

 12R、平山智加が逃げ切り。序盤の気配はそこまで良いとは見えなかったが、予選が終わってみれば3位通過。準優は1号艇である。レース後は廣中智紗衣と笑顔で声を掛け合い、並んで対岸のビジョンでリプレイをチェック。1マークの自身の走りを見ると、軽くうなずいて着替えへと向かうのだった。なお、平山はこの1着で通算999勝! 1000勝にリーチ! 優出を決めての水神祭、なるか!?

 さて、得点率トップは11Rで高田を沈めた川野芽唯! 12Rで遠藤エミまたは渡邉優美が勝っていれば上回ったのだが、渡邉が2着、遠藤は4着でトップを逃している。遠藤は大きな着順を獲ってしまい、準優1号艇も逃すことに。松本晶恵と並んで控室へ戻りながら、何度も小さく首をひねっており、レースぶりなのか機力なのか、納得がいかなかったことは明らかだった。渡邉のほうは5号艇で道中競り勝っての2着。1マークも全速で攻めたし、また予選2位通過で準優1号艇も手にした。比較的表情は柔らかく見えた。
 で、川野はといえば、どうやらあまり状況を把握していなかったらしい。12Rのエンジン吊りを終えて、飄々と控室へと戻る途上で、藤原菜希に「メイさん!」と1位ではないかと告げられても、よくわからん、と淡々と口にするのだった。そこに報道陣が1位であることを伝えると、川野は藤原に「1位だって」とどこか他人事のように伝えるのだった。ここからはプレッシャーも感じる時間を送ることになるだろうが、ひとまず1位を知ったときの様子はごくごく自然体なのであった。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)