BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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TOPICS 初日

おかえり生奈

 生奈が帰ってきた。正確に言うなら、生奈が記念戦線に帰ってきた。そんな言葉が自然に浮かぶ第4Rだった。
 コンマ02、4カドまくり。
 まず、カド受け3コースの上田紗奈がコンマ25まで凹んでいるのに、委細構わずキワのキワまで踏み込む気合が生奈らしい。スリット直後から一気に絞め込み、インから伸び返した西岡成美を1マークのはるか手前で叩き潰したのも生奈らしい。さらに言うなら、あれだけの早仕掛けにも関わらず、ターンマークの頂点でしっかり落として⑤土屋南のマーク差しを完封したのも生奈らしいし、4-5という外枠決着で3連単が39倍だったのも生奈らしい(笑)。
 このわずか1/4周を見ただけで、「おかえり」の言葉が湧き上がってきた。やっぱ、この“水上のお転婆”がいるといないでは、女子ビッグのヒリヒリ感がかなり違うと思うのだが、どうか。

 なにを今さら、そんなん、当たり前じゃん。
 往年のファンは一笑に付すだろう。だがしかし、最近になって激増した若いファンは、小野生奈という女傑のスゴさヤバさカッコよさを知らないかも? 老婆心ながら、そんな初心者のために簡潔な生奈ファイルを記しておこう。
★落ちこぼれ=やまと学校時代はまったく成績が振るわず、やまとリーグ勝率は下から2番目の3.41。主席の深谷知博の8.23とはまさに雲泥の差、清水沙樹、喜井つかさ、真子奈津美、坂咲友里ら女子の中でも断然のビリだった。
★水神祭まで1年半=デビューしても苦難は続き、初めての1着に費やした時間はぴったり1年6カ月。179走目での水神祭は同期の中でケツから4番目の遅さだった。この当時、小野生奈がSGで活躍する選手になると思った人はどれほどいるだろう。

★試運転の鬼=そんな成績でも生奈は焦らず腐らず、ヒマさえあれば芦屋、若松の水面で練習に次ぐ練習を重ねた。水面に乗って乗って乗って、さらには師匠の吉田弘文(2015年に大怪我で引退)のスパルタ特訓で成績も急上昇。初勝利から3年後の2014年にはB1⇒A1に飛び級で昇進したのだが、その適用期間(13年5月~10月)の勝率は5.10⇒6.60という驚くべき高率かつ上昇率だった。
★A1に昇級した2014年には2月の九州地区選でGIデビュー~5月のオールスターでSGデビュー~8月のレディースチャンピオンでGI初優出と一気に記念戦線に顔と名前を売りつけた。記念優勝は2017年のレディチャンと2021年のレディースオールスターの2V。かくして生奈は「ボートレース界のシンデレラ」「艇界の下剋上娘」などと呼ばれつつ、その庶民的な笑顔ともども多くのファンに愛されるスター選手に成り上がったのである、チャンチャン。

 最後の方はちょいと端折ってしまったが、あれこれ書いている間に11Rが終了。3号艇の生奈は鋭いスタートから安定感抜群の握りマイで2番手確保~そのまま危なげなく2着を取りきって初日に18ポイントをGETした。記者席からその姿を見つめながら、「もしかしたら、私は最終日にも同じようなコトを書くのではなかろうか」などと思った次第だ。うん、もしかしたら、この記事は非常識なフライングだったかも?(笑)

独断パワー評価(時系列)

 ついつい生奈記事に終始してしまった。2連勝の竹井奈美など他にも書くべきファクターは多々あるのだが、今日のところはザックリのパワー評価(1Rから明らかに中堅上位より上と思った選手と、逆にワースト候補と思った選手を列挙)で〆させていただきたい。

★薮内瑞希=1R道中の追い上げしっかり、全部の足が強めのバランス型か。
★神里琴音=道中で着順こそ落としたが1Rも7Rもスリット近辺の行き足はトップ級とみた。
★櫻本あゆみ=2Rのスリット足が非凡だったし、2マークでの突き抜け逆転のターン足も天晴れ。トータル上位だ。
▼中村かなえ=2Rの道中でズルズル下がったレース足は超厳しい見え方。ワースト級かも。
★佐々木裕美=3Rで逃げただけだがスリット足~1マークの押し足に余裕あり、さすがの69号機。

★井上遥妃=3Rでその佐々木を追撃し、後続をどんどん引き離したレース足は見どころたっぷり。常に穴一発を警戒しておきたい。
▼堀之内紀代子=3Rも9Rも起こしから重く、スリットからの伸びも一息で宙ぶらりんの印象。このままでは厳しい。
★小野生奈=パワーについても触れると、4Rも11Rもスリット近辺の行き足がゴキゲンで初日にして自力猛攻が可能な仕上がり。
▼?上田紗奈=前検の足合わせで迫力満点に見えたのに、4Rのレース足はドカ遅れから見せ場もなくシンガリまで後退……ちょっと信じられないような惨敗だった。スタートだけの問題なのか、実戦足も悪かったのか、現時点では判定不能っす>< どーした紗奈29号機!?

★竹井奈美=5R5号艇・10R4号艇でのド派手な連勝だからして悪い道理もないのだが、特にスリット近辺の行き足が強力な見え方。ココを維持できれば、明日の11R1号艇で3連勝も濃厚か。
★三浦永理=前検から行き足が良さげだったが、実戦6Rでも4カドからしっかり突き抜けてまくり一撃。相棒の11号機は32%の数字よりはるかに強力な行き足だと思う。
▼田口節子=新ペラが災いしたか6Rも11Rもこの選手とは思えないズリ下がり。今日の足色ははっきりワーストだ。
★海野ゆかり=7R、4カドから2着を取りきっただけだがターン回り含めて余裕たっぷりの道中。展開を突いて上位着を並べて準優1、2号艇。そんな未来図が浮かぶ安定のレース足だ。
★香川素子=8R2コースからの行き足はイン勝浦真帆を圧倒。前検よりパンチ力が増した見え方で、最近の好調ぶりがまんま19号機に投影されているかも。

★小芦るり華=8Rは展開に恵まれての1着でもあったが、特訓からスリット近辺の行き足に魅力あり。
★西村美智子=9Rは展開一本で勝った川野芽唯より、5コースから自力で攻めた美智子さまのスリット足に惹かれた。当然センター枠なら十八番の絞めまくりが可能なパワーだ。

 他にも良い面悪い面で気になる選手が何人かいたけれど、明日以降にさらなる精査とともにアップしまーす。(photos/チャーリー池上、text/畠山)