BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――混戦!

 混戦ここに極まれり。トップ争いは、3日目終了時点で首位に立っていた桑原悠が2Rで5着に大敗したことでその行方が混迷。8Rで徳増秀樹が2着となったことで、ようやく様相が見えてきたと言える。9Rで土屋智則が2着。これで徳増と得点率では並んだが、上位着順の差で徳増が首位に。あとは10Rの稲田浩二、12Rの池田浩二の結果待ちとなったが、池田は6号艇なので、最大の焦点は10R3号艇の稲田、という空気である。

 その稲田は、1マーク握ったものの5着。トップ争いからは大きく後退することとなってしまった。地元でのSG初Vも視界に入ってきたなかで、この大敗は痛かった。悔しい結果となったはずだが、例によってレース後の稲田は感情をまるであらわさない。粛々と控室へと消えていったが、もちろん内心は複雑な思いが渦巻いていたことだろう。

 それにしても、この10Rでもし6着なら桑原悠が準優圏外に陥落していたのだから、実に複雑怪奇な勝負駆けだったのである。3日目終了時点でのトップが予選落ちを喫するなんて(減点もないのに)、見たことがない。桑原はなんとか4着に踏みとどまったのだが、それでもこの時点で17位である。準優1号艇が視野に入っていたものが6号艇とは……。混戦模様を象徴する事態と言える。というわけで、レース後の桑原はといえば、予選通過を果たしたという雰囲気ではなく、大魚を逃してしまったというようなガッカリ感が強かった。当然だと思う。

 12Rの池田はさすがに6号艇6コースは遠かった。4着で8位までランクダウン。おそらく1着なら、という状況は把握していたようであるが、さすがの池田でもハードルは高かったか。

 ちなみに、3位が宮地元輝でオールスターにつづいて準優1号艇。12Rが終わるとさっそく白い艇旗と1番の艇番をつけていたが、こちらの姿を見るや「本当に1?」とボソリ。「つけたはいいけど、白が4つ付いてたら恥ずかしい」とそわそわしているのであった。大丈夫、あなたが本当に1号艇です! ほんと、宮地最高。

 ボーダー争いもやはり混戦で、得点率は6・20からなかなか下がらなかった。10Rの寺田祥は1号艇でピン勝負。2着なら6・00と、通常のボーダーならクリアの可能性もあったのだが、これでは届かない公算が大きいとあらば、山田康二の差しに舳先をかけられても、それを振りほどこうとする2マークとなるのも致し方ない。それが長田頼宗の押っつけもあって流れたとしても、リスクをとってアタマを狙うのが勝負駆けというものだ。寺田は、エンジン吊りを終えてヘルメットを脱ぐ際、はっきりとわかるくらいに眉間にシワを寄せた。そして肩を落とし、うつむいて控室へ。無念の敗戦……。

 10Rでは、西村拓也と吉川元浩の激しい3番手争いが繰り広げられている。西村は3着条件、4着では6・00にとどまって予選突破が危うかったのだ。西村は陸に上がるとすぐに吉川のもとに駆けていって頭を下げている。もちろんクリーンなレースではあったが、3周1マークでやや張り気味になっていた部分を詫びたのだろう。

 その西村に最後に迫ったのが関浩哉。関もまた3着条件で、なんとしても西村を抜きたかった。しかし、及ばず4着。レース後にヘルメットを脱いだ関は、眉間にシワを寄せ、何かぶつぶつと呟いていた。関がこんなにも険しい表情をしているのを見たのは初めて! 童顔の関が、はっきりと勝負師の顔を見せたのだから、驚くと同時に頼もしさも感じた。実は、これで6・17の得点率となり、この時点では19位とまだ望みはつないでいる。しかし関は3着勝負と腹を括っていたのだろう。カポックを脱ぐ間も表情はカタく、控室へと消えていくときにも溜め息交じりだったのである。負けた人に言うべき言葉ではないかもしれないが、こんな関浩哉もまたカッコいいと思った。

 で、関は残ったのである! 12Rで篠崎元志が6着に敗れ、圏外に去った。これで関が18位に浮上。桐生順平にからかわれ気味に祝福を受けて、関は微妙な笑顔を見せた。やはり誰かの失敗で浮上というのは複雑なものなのだろう。元志の悔しさにまみれた、硬い表情を目にしていればなおさら、である。そう、元志は険しい表情で、まっすぐ前を見て引き上げていった。それが実に痛々しく……。関くん、明日は元志の分も頑張るのだ!

 桐生に称えられていたのは、佐藤翼。2着勝負を見事にクリア! 逃げ切った峰竜太にも拍手を送られている。佐藤は一気に9位にまで浮上して、準優は3号艇。思い切り攻めるレースを見せてもらいたいぞ!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)