BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――高め合う

 昨日の終盤の時間帯、菊地孝平と石倉洋行が係留所で話し込んでいた。支部は違い、期はけっこう離れている二人の絡みであり、これまでに見た記憶がない。二人はペラ調整室の屋根のあたりや装着場への渡り橋の手すりを指さしながら話していて、どうやらスタートの目標物についての話ではないかと推察された。菊地といえば艇界きってのスタート巧者。20期以上も後輩の石倉が教えを乞うている「菊地スタート講座」のようなものだろう。

 今朝、石倉に確かめてみると、やはりその通り。石倉は、宮島のダッシュからのスタートの際、200m起こしの目標物はわかっているのだが、それよりさらに引いた地点のものも欲しいと考えていて、それを菊地に相談したとのこと。昨日の5号艇4カドのレースを改めて見てみると、200m起こし。さらに引いてダッシュに威力を持たせたいわけだ。石倉のほうから菊地に訊きにいったそうだから、その勇気が素晴らしい。

 ただ、菊地に言わせれば少し違っていて、教えていたのではなく「考えを擦り合わせていた」となる。たまたま係留所で隣同士になったときに初めて言葉を交わしたそうだが、スタートの考え方が似ていると感じた。菊地によると今節のメンバーで考え方が似ているのは中澤和志だそうで、石倉もその一人と気づいたわけだ。そこで、石倉の求めに応じたというよりは、自分の考えを石倉に話して、石倉のそれと擦り合わせていた、ということ。たとえば中澤とは考え方が似ていても、当然違うところもあるわけで、石倉とそこを話し合うことで「僕にとっても勉強になるんですよ」と菊地は言う。そうしてお互いにスタートをブラッシュアップしているということだろう。
 で、今日もまた、2R発売中に岸壁で水面を指さしながら、あるいは装着場にあるボートを使いながら、二人は話し込んでいるのだった。先輩後輩の間柄もあって、やっぱり「菊地スタート講座」に見えてしまうんだけど(笑)、そうしてお互いを高め合っているというわけだ。今日の石倉は12R4号艇。起こし位置にも注目して見てみよう。

 さて予選最終日。1Rでは上平真二が差し切り1着。ボーダー5・80だとすると3点が必要だったから、これで地元マスターズ予選突破を確実にしたことになる。というか、準優好枠に近づく1着ですね。ピットに引き上げてきた上平はやはり淡々とした振る舞い。ところが、西島義則に称えられると、ニコッと微笑を浮かべた。おぉっ、ヒゲと笑顔が素敵です! やはり大先輩の言葉は笑顔を引き出すということだ。

 2Rでは笠原亮が逃げ切り。日跨ぎの連勝で、18位圏内に浮上した。後半も3着以上が必要となりそうで、予断は許さない状況ではあるが、予選前半の大きな着を巻き返すことには成功したと言える。相変わらずレース後は足早に、しかもヘルメットをかぶったまま控室に戻ってしまい、そこでの快哉のようなものはまるで感じられない笠原。しかし、公開勝利者インタビューに向かう際に顔を合わせたら、ニッコニコじゃないですか! 予選突破に向けてぐっと視界が開けただけに、気分が上向くのは当然だろう。

 一方、2着2本が欲しい森永淳は、2R4着。後半は1号艇だが、逃げ切ってもボーダーが下がるのを待つ状況となってしまった。さすがにピットに戻って、控室へと向かう際の表情は厳しく、憤怒の様子にも見えるほどだった。痛恨の敗戦だったわけだ。ボートレースは何があるかわからない、というのはまさに常套句。それを信じて、後半を全力で先マイするしかない!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)