BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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蒲郡メモリアルTOPICS 2日目

新・王者の気配

 

 風の噂ではあるが、王者・松井繁が「自分(王位)の後継者は元志」と漏らしたとか。支部こそ違え、イケメンぶりやレースの気風などなど共感できる部分が多々あるのだろう。傍から見ていても、往年の王者と篠崎元志の姿が重なることがある。1マークでの判断が冷静かつ的確で、5着6着が少ない。道中で誰かに抜かれることもほとんどない。そうやってがっちりしっかり上位着順を並べて、ふと気づけば準優の好枠をゲットしている。「王者に足る条件はド派手なパフォーマンスではなく、卓越した未来設計と堅実な政策」

 松井を見ていて感じることを、元志にも感じるのである。

 

 

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 今節の元志も、ひたひたと“王道”を歩んでいる。昨日は劣悪な水面環境にも慌てず騒がず2着、2着。今日の11Rでは、4カドから機敏な2番差しから1着をもぎ取った。このレースで特筆すべきは、井口佳典と鍔迫り合いになった2周ホームだ。井口に舳先を突っ込まれた元志は、なりふり構わず締めた。「井口さん、舳先を抜かなかったら、このままターンマークに激突するまで付き合いますよ」みたいな鬼気迫る締め付けだった。顔に似合わぬ負けん気の強さが、元志の魅力でもある。兄にあって弟にはまだまだ足りないハートの強さ。この負けん気の部分に関しては、20代の松井よりも上かも知れない。

 その迫力に気圧されるように、井口は舳先を自ら抜いた。そして、元志はマイシロのない2周1マークを美しいモンキーで舞った。あの競り合いで、元志が少しでも怯んで直進したら、2着になった可能性は高い。2着8点か1着10点か。この2点の価値は、V争いの最前線では何倍にも大きく膨れ上がる。昨日から2・2・1着で、ふと気づけば元志は予選3位になっていた。

 

 

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 さて、そんな完成度の高い元志にも、唯一とも言うべき弱点がある。1号艇での取りこぼし。もちろん、これは一時的なメンタル面の障壁(ここ2年であったあれやこれやのトラウマだと思う)で、近い将来に克服されることは間違いない。ただ、それがいつなのかはわからない。明日の元志は、この重要な局面で1号艇を任された。8Rの(おそらく)イン戦でどんなレースを見せるか。これが、今節のV戦線を占う意味で、大きな分岐点になるような気がしてならない。単なる1戦の勝ち負けでなく、5日目・6日目への布石になるはずだから。ちなみに、明日の8Rの2号艇は、王者・松井繁である。

 

Wサプライズ!!

 

 

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 で、そんな好成績の元志を抑えて予選トップ&2位に立ったのは、超伏兵とも言うべき下條雄太郎と遠藤エミ!! いやぁ、9Rの下條のレースっぷりは実に大したものだった。イン丸岡正典に、2コースから真っ向勝負のジカまくり。この1マークの強襲は惜しくも届かなかったが、そこから追って追って付け回って、2周1マークの全速差しでついに丸岡を捕えきった。パワー的には良くて中堅と見ていた(今もそう思っている)ので、この逆転劇はちょっとしたサプライズだった。精神面がかなり充実しているのだろうし、スキル的にも少し前より格段に進化しているように見えた。

 

 

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 そしてそして、さらなるサプライズは紅一点・遠藤エミの暫定2位だな。今日の3Rは、待望のイン戦。が、気合が入りすぎて、1マークを思いっきり外してしまった。あのミスターンで勝てるほど、SGは甘くない。仲口博崇が、今村豊がズボズボと差し抜けて、さらに最内から森高一真もやってきた。遅れをとって、しかも大外のエミにとって絶対絶命の隊形だ。

 だがしかし、その大ピンチの2マークでエミは大仕事をやらかす。外に開いてからの全速差しが、ものの見事に突き刺さったのだ。先マイした仲口のターンが流れたという幸運もあったが、あの状況であの“水上この一手”と言うべき絶妙の立ち回り。27歳の女子レーサーがよくぞできたと思う。昨日のぶん回しターンに続き、今日は絶妙な差しハンドルに特大のあっぱれを贈りたい。マジ、スゴイと思う。

 

 

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 と若いふたりを手放しで持ち上げつつ、「Vの最有力候補」と呼ぶにはまだまだほど遠い、というのが正直なところ。明日の下條は4・5号艇、エミは6・3号艇。エミに至っては、この成績が評価されて12Rの凄まじい面々にマッチアップされた。そう、これからが本当の鉄火場SGだ。トップレーサーたちが目の色を変えて襲い掛かる中、どこまで対等に戦えるか。苦戦必至と予想するのだが、この修羅場の中で20代の彼らが得るものは、計り知れないほどデカイと思う。

 

 

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 あ、最後に、昨日から気になっていた地元6人衆の「3連対リレー」なのだが……今日も2R柳沢一が3着、3R仲口が2着、4R池田浩二が2着、7R原田幸哉1着、8Rでは柳沢2着&赤岩3着と順調に舟券に絡み続けて、なんとなんと昨日から15連続3連対!!! でもって、続く9Rでエースの池田浩二がまさかの4着に敗れ、記録は「15」でストップしましたとさ、チャンチャン。(photos/シギー中尾、text/畠山)