BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――ペラ調整を見る

 久しぶりの唐津ピット。以前とは違う点として、「屋外ペラ調整所」が拡大していることがあげられる(屋外といっても唐津のピットは半屋内のような感じ)。唐津のペラ小屋はそこまで狭いというわけではないが、やはりコロナ禍ということもあって、密が生じないよう、ペラ調整の場所を分散したということだろう。で、唐津のピットは奥行きこそあるものの、整備室やペラ小屋近辺はそんなに広いというわけではない。しかも今日は、宿舎に運び込まれる私物が固まって置かれていることもあって、こちらとしては身の置き所がなかなか難しいのだった。そして、結局はペラ調整所が手を伸ばせば届くくらいの位置で佇む時間が多くなった。だから、選手がペラを叩く様を間近で目の当たりにする格好に。選手の集中力に影響を与えないよう、息をひそめるワタクシなのであった。写真はすぐそこでペラを叩いていた石野貴之である。

 前検日ということもあって、航走を終えた選手たちで、受け取ったペラの形状に納得がいかない選手たちは、自分の形に激しく叩き変えることになる。かなり強烈な打突をすぐ目の前で見ているわけだから、金属音はいつも以上に強く耳に届いてきた。もう、親の仇か、というくらいのドでかい衝撃音。これ、ペラ小屋のなかだったとしたらさらに大きく響いているのではあるまいか。もちろん、選手たちにとっては前検日に聞き慣れた音響であろう。僕などは驚きとともに叩いている様子を眺めるわけだが、選手たちは誰も顔色ひとつ変えずにペラと向き合っているのであった。僕が見たなかで最も強い打撃を加えていたのは馬場貴也。自分の形とはまったく違っていたんだろうな、と想像する次第。

 これだけ間近で見ていると、改めていろいろなことに気づきます。山口剛は左手でハンマーを打ち下ろしていた。これまではあまり意識して見ていなかったのだが、そうでしたっけ? ほとんどの選手が右腕でハンマーを使っているというイメージなのだが。左利きといえば篠崎元志。彼も左腕で打っていたんだっけなあ……明日、確認してみよう。

 ペラ室の風景で印象に残ったのは、池田浩二が岩瀬裕亮にアドバイスを求めているように見えた場面。言うまでもなく岩瀬のほうがはるかに後輩で、だから池田がアドバイスされているような光景というのはなかなか新鮮だったりする。池田は好モーターを引いているだけに、先輩後輩関係なく、聞けることは聞いて、万全の仕上げに持っていきたいところ、だろうか。

 整備室の様子はといえば、やはりギアケース調整をしている選手が今日も多かった。そんななかで本体を割っていたのは、赤岩善生、長田頼宗。まあ、赤岩が早くから本体整備に取り掛かるのは珍しいことでも何でもなく、いや、むしろルーティンとさえ言えるだけに、驚く必要はない。気になるのは長田のほうで、大きな違和感があったということだろうか。あと、今垣光太郎がキャブレター調整をしていた。まあ、それもいわゆる外回りの調整ではある。

 写真は、整備室の隅っこにあるタブレットに見入る前本泰和と石渡鉄兵。このタブレットが何かというと、モーターの機歴簿なのだ。今でも大きなファイルを機歴簿として使用している場のほうが多いと思うが、唐津は以前に来た時もタブレットを導入していた。ペーパーレス化! 後ろから少々覗き込んだら、五角形か六角形のマトリクスも表示されていたりして、なかなか優れもののようである。ここに陣取る選手を節間何人も見かけることになるだろう。ピットの記者席から装着場に出るときはその真後ろを通ることになるので、迷惑にならないよう気を付けます。(黒須田)