BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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蒲郡レディチャンTOPICS 3日目

悲喜こもごものセット交換

 3日目に突入して、複数の部品を交換するレーサーが急増した。特に増えたのが【ピストン2個・リング4本・シリンダーケース】、俗にいう「セット交換」だ。とある元整備士さんの言葉を借りれば「人間の内臓に喩えると心臓移植のようなもの。エンジンの原動力を司る器官を、前年度まで稼働したそれなりに優秀な中古パーツと全取っ換えする手術です」とのこと。心臓が換わると考えれば、もちろんモーター全体に与える影響も小さいはずがない。裏を返せば「心臓を取り換えなくてはならないほど症状が悪い」と言えるだろう。

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 今節、真っ先にセット交換に踏みきったのは、初日ドリーム1号艇の小野生奈だ。前検の症状があまりに悪く、「このままでは最終日までに息絶える」と踏んでの大手術。で、ほぼ間違いなくこの手術は成功だったと考えていいだろう。元整備士はこうも語っている。
「ビッグレースを控えた場は前年度の銘柄級セットを温存しているケースが多く、ある意味で早い者勝ちではあります。まあ、真っ先にエース級のセットを出すかどうかは分かりませんけど(笑)。それに、どんなに良いセットと交換しても、器(本体)との相性が悪ければパワーアップしないケースもままあります」
 心臓移植で合併症が起きるようなものか。一番乗りの生奈はワースト級の行き足が明らかに良化。他の部分も劣化したムードはなかった。
 さて、今日になってセット交換した選手は、その後の足色はどうなったか。私なりの勝手な評価を記しておこう。
★2R・守屋美穂(6号艇4着)

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 相変わらずターン回りでキャビキャビ、出口から押して行くムードもなく5着大敗。後半7Rは起こしから付いていけずにドカ遅れ惨敗。まったく効果がなかったようだ。守屋はセット交換の他にギヤケースやキャリアボデーなども交換しているが、未だに「当たり」が見出せていない。深刻な病状と言わざるをえない。
★7R・土屋千明(6号艇4着)

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 昨日までワーストパワーのひとつに数えていたが、このセット交換は「当たり」。少なくともストレートでずり下がることはなくなったし、ターン回りでも他艇とビッシリ競り合えるレベルになった。直線は中堅上位、出足系統は中堅くらいまでアップしたと思う。
★8R・魚谷香織(3号艇4着)

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 課題だったストレート足は据え置きか小マシになった程度だが、サイドの掛かりがスムースで出口から押して行くムードも良くなった感じ。それでも全体的には中堅あるなしで、胸を張って「当たり」と言うレベルではないと思う。
★9R・平高奈菜(1号艇2着)

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 昨日までの私の評価は「行き足主体に中堅上位。十分に戦える」と見ていたので、このセット交換はかなり意外ではあった。平高自身はかなり気に食わない部分があったのだろう。昨日までの私の鑑定を支持するなら、足色にさほど変わったイメージはなく「据え置き」だった気がするのだが……最初の立ち位置からズレているので、セット交換後の変化はちょっと言及が難しい。
 ってな感じで、私の感覚としては「当たり」が生奈と千明、「ちょいアップ」が魚谷、「据え置きかむしろ劣化」が守屋と平高(←?)。で、このセット交換やクランクシャフト(背骨に相当)交換などは「速やかに変化が現れず、何度かレースを積むうちに他の部品と馴染んでゆっくり良化するケースもある」(元整備士)とのことで、明日以降もしっかり“経過観察”をしていきたい。
★今日のチヒロ64

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 さてさて、今節の圧倒的主役・大山千広64号機が、今日も猛烈な節イチパワーで無傷の連勝を伸ばした。7Rは4カド角ひとみの絞めまくり(←私の想定外の展開)に連動しての鮮やかなマーク差し。12Rは3コースから伸びなりイン田口節子をツケマイで叩き潰す一撃決着。スタート直前に上体を大きく跳ね上げてアジャストしたというのに、64号機は「そんなん知らんがな!」という感じで1マークまでにずんずん伸びて行った。あれはもう反則のレベルでしょ!

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 あえて欲を言わせてもらうと、昨日までコクのある“作品”に比べて今日は淡泊というか「千広じゃなくても勝てたかも?」的な物足りなさを感じたのだが、こんな贅沢すぎる感想こそが今節の千広×64号機の凄さでもある。明日の11Rは2号艇から6連勝を目指すチヒロ64(現時点で③着以内で自力トップ)。もはや準優を待つまでもなく、最大のライバルは自分自身という領域に達した気がしてならない。(photos/シギー中尾、text/畠山)