いや~、やられた。というか、見落としていた。10R、倉田茂将の4カドまくりだ。
この男のストロングポイントといえば、4カドまくりではないか!
現在の新概念データでは、まくり/まくり差し/差しが1/1/0となり、この1年間は4カドまくりが鳴りを潜めていたのですっかり見落としていたのだ。かつて、倉田といえば4カドまくり勝ちが突出していて、そういう原稿を書いたこともある。しかし、前々期にF2を喫してスタートを控えていたことから、まくりが減った。だから、足枷が取れればまた4カドまくり炸裂はある、と4号艇・倉田茂将と見た瞬間に思い出さねばならなかった! コンマ01だからこれまた相当に危なかったわけだが(笑)、倉田の4コースはまくり一撃が常にあると頭に叩き込むべし!
今日の倉田は連勝。前半3Rはイン逃げだったこともあり、特に表情を変えたりはしていなかったが、10R後は爽快な笑みもこぼれていた。あるいはスタート早すぎた?の苦笑いも含まれていたか。とにかくお見事!
佐藤航も連勝だ。前半1Rで3コースまくり差し、後半8Rでは5コースまくり差し。見事に2本のまくり差しを突き刺した。8Rは数原魁の4カドまくりに乗ったものだったが、ハンドルが速い速い! 1マークの手前では数原の艇とはまったく角度が違っているので、ぜひリプレイでご確認いただきたい。佐藤のストロングポイントは、まさに奇数コースのまくり差し。嗚呼、8Rの佐藤は6号艇で、バナレで5コースを獲ったものだったので、アタマまではノーマークでありました。くそー。
鮮やかな連勝劇に、レース後は次々と報道陣に声をかけられていた佐藤。近況の上昇株の一人だから、すでに注目していた方も少なくないだろうが、この“目立つ一般戦”でのナイスショットはさらに耳目を集めるものになるはずだ。航と書いてワタルと読む選手もいるわけだが、彼はサトウコウです。お見知りおきを!
この佐藤の会心を演出するかたちになったのが数原魁。スロー勢が遅めのスタートだったとはいえ、しっかりS決めて一気に内を叩いてレースを作ったのは数原である。団体戦的に見れば、内枠のレディースを沈めたのは数原だからMVP的な走りを見せたと言っていい。まあ、本人としては悔しさも半分くらいあるかもしれないが。
レース後、数原は実に丁寧に、ゆっくりとボートを磨いていた。この欄では今垣光太郎のボート磨きをよく書いているように、レース後に自艇を労わるように磨き上げる選手は何人かいるが、数原はこれまで見た誰よりも時間をかけ、入念に磨き上げているのだった。僕は最初、ボート修理の係の人が作業をしているのだと思い込んだほどで、しかし体型が選手っぽいので目を凝らしてみたら、数原だったという次第。相棒を大事にする姿勢は、買いです!
ところで、10Rで中野希一が転覆。レスキューの上では立ち上がっていたし、自力で降りてしっかりした足取りで歩いていたので無事なのかと思ったら、腕を痛めていたようだ。埼玉支部の先輩たちが心配そうに中野を取り囲み、言葉をかける場面があった。結局、中野は途中帰郷。昨日はしっかり着をまとめており、台風の目となることも期待されたのだが、無念のリタイアとなってしまった。まずは一日も早い快癒を。
この転覆の原因を作ったとして、森下愛梨が妨害失格。一足先にピットに戻ってきた森下は大きな責任を感じているかのように顔をゆがめ、中野がレスキューで帰還するとすぐさま走って中野のもとに向かっている。自分の航法をかなり悔やんでいるようであった。
同じレースに出ていた小池礼乃と中田夕貴が森下を慰める場面もあった。中野のもとからカポック脱ぎ場へと向かっていた森下を待ち構えるように囲んで、ともに悔いを分かち合っていたのだ。団体戦という観点からは、森下の妨害失格の時点でポイントは白組にわたる。だが、そうした発想などまるでハナからなかったかのように、一緒に顔をゆがめて見せる小池と中田だったのだ。3人で悔しがる姿は、逆に団体戦らしい光景のようにも見えていた。
11Rは宮之原輝紀がイン逃げ快勝。ピットではもちろん明るい表情ではあったが、同時に実に涼しい表情にも見えていた。このメンバーに入れば、格上であり白組の大将格であり。イン戦を取りこぼすわけにはいかなかったし、また逃げて当然というところもあっただろうか。そんな様子がむしろ頼もしく、女子も含めて若手の多いシリーズにあっては痛快でもあるのだった。(黒須田)