●10Ｒ
予選オール２着の池田浩二が、逃げ切ってついに２着ロードを脱出！ ピットに戻って、出迎えた大峯豊がニヤニヤと言葉をかけると、池田が言葉を返して、大峯が「ガハハハッ！」と高笑い。やはり、やっと１着が、界隈のやり取りだったのだろうか。大峯がさらに「●●●●（聞き取れず）食いたいです！」と言うと、池田は「お前は帰さんからな！」。打ち上げの相談？ ようするに、レース後の池田は実にゴキゲンなのであった。会見では２着続きについて特に言及はしなかったけれども、そりゃあ１着が出なかったことは頭の隅には引っかかっていたはずで、ここでしっかり逃げたことはやはり喉につっかえていたものが取れたようなものだっただろう。しかも、ドリームと同じ組み合わせの１号艇２号艇、そこでは差された茅原悠紀をしりぞけたのだから、足の上積みも実感できたはずだ。気分も上がりますよね。
２着の片岡雅裕は、いつも通り淡々としたもの。それは記者会見でも変わらず、であった。足は伸び寄りにしたほうが、とのことで、おそらく優勝戦はダッシュ戦になるだろうから、むしろ好材料になりそうだ。去年のオーシャンでも優出し、その後のメモリアルでＳＧ初優勝。ゲンのいい水面だけに、明日も好走が期待できよう。去年のデンで行くと、このあとのオーシャンでもしや……。
●11Ｒ
関浩哉が逃げ快勝。ピットに戻る途中、ファンが大きな歓声を関に送ると、それに応えるように関は天を仰ぐポーズを見せて、さらにファンを沸かせていた。
ピットに戻ると、とにかく笑顔！ 童顔をほころばせて、なんともキュートな表情である。先輩である鹿島敏弘に声をかけられたときには、ホッとしたようなところも見せていた。やはりある程度はプレッシャーもあったか。その後も、対戦相手から声をかけられ、足の良さを称えられたりしている間じゅう、関の顔から笑みは消えなかった。爽快な勝利！
２着は桐生順平だ。昨日の減点をなんとか取り戻した格好だが、しかし道中は後輩の佐藤翼に追いまくられる格好。足的には佐藤のほうが良さそうで、何度も並走に持ち込まれており、関と話しているときには「俺のほうは抜かれそうだった」とも漏らしていた。まあ、その航跡は確かなもので、正直抜かれそうな雰囲気はなかったのだが、しかし走っているほうとしては、パワー満点で追いかけてくる後輩の存在をしっかりと感じていたということだろう。
というわけで、桐生は疲れた顔を見せながら、佐藤と視線を交わしていた。佐藤はやはり悔しそうで、桐生にちらちらと視線を向けながらも、苦笑いとともに顔をそむけること数回。あまりに強い先輩の壁を改めて痛感したのかもしれない。
●12Ｒ
波乱の最終カードは、ピットもおおいに盛り上がっていた。地元の稲田浩二だ。椎名豊が上を攻めた展開で、中島孝平に続いて差し込んだが、ここからが２番手競りとなった。２周ホームでは伸びてくる椎名を押し込み、さらに中村晃朋をなんとか押さえ込もうとしたが、３周１マーク、内からのおっつけを交わされて万事休す。その瞬間、選手控室から「ああああぁぁぁぁっ……」と大きな溜息が聞こえてきた。また、艇運の方や我々報道陣も、やっぱり地元に肩入れしたから同様に溜息。スタンドからも同じような声は聞こえてきた。稲田、無念４着。
もう書くまでもなく、レース後の稲田は淡々としたもので、やはりいつもと何も変わらないのだが、控室に戻る足取りがいつもより速足だったように思えた。それが悔恨をあらわすものだった、というのは考えすぎだろうか。中村とは足の差とも見えただけに、その部分への無念もあったかもしれない。ともあれ、地元の意地、しかと見せてもらった！
稲田に競り勝った中村晃朋は、今節よく足合わせをしていた丸野一樹とともに対岸のビジョンに映るリプレイを見つめていたが、カポック脱ぎ場に向かうときには力強い、充実し切った表情を見せた。会見にあらわれたときにも、「よっしゃっ！」と一声、あげている。ただ、なにしろ１号艇で敗れたのが後輩なだけに、カポック脱ぎ場で装備をほどく際、少しだけ複雑な表情も見せていた。明日は後輩の分も、という思いは強いはずだ。
勝ったのは中島孝平。この人もレース後は稲田と同様、あまり感情を出さないタイプ。歓喜のようなものも見られていない。会見で語ったのも「完全に展開ですね」。語尾には（笑）をつけたくなるほど、自嘲気味に聞こえたものだった。それだけに、ピットで歓喜爆発というわけにはいかなかった部分もあったかも。
レース後の表情がとりわけ印象に残った選手は、やはり石丸海渡である。最高のチャンスをモノにできず、６着大敗。椎名豊のジカまくりを警戒はしていただろうが、抵抗し切れなかったのはおおいに悔いが残るだろう。そうでなくとも気持ちの強さを感じる顔つきの石丸だが、ピットに戻ってヘルメットを脱ぐと、憤怒の表情があらわれている。肩をいからすような歩様だったのも、悔しさがうかがえる様子だった。装備をほどいて控室へ消えていくときも、歯を食いしばるような表情で、その心中が伝わってくるものだった。この雪辱を、甲子園とは言わず、さらに上の舞台で晴らせ！ 今日の敗戦がそこにつながっていくことを願います。（ＰＨＯＴＯ／池上一摩 ＴＥＸＴ／黒須田）
