BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――ハッピーバースデー!

 9Rを逃げた井口佳典がピットに戻ると、出迎えた菊地孝平、田村隆信、高田ひかるが笑顔で拍手。そして「♪はーっぴばーすでーとぅゆ~♪」。そう、今日8月22日は井口佳典のお誕生日! 井口は見事、バースデーウィン! 井口は右手を何度もひらひらと振って、そんなんちゃうわー、と意思表示。まあ、照れ隠しでしょうかね(笑)。ピットに戻り鼻で笑顔にさせられたから、その後も笑顔が途切れない。井口も46歳になったわけだが、誕生日が嬉しいというよりは、仲間の心遣いに癒されたという感じだろう。とにもかくにも、おめでとうございます!

 10Rを逃げ切った岡崎恭裕も笑顔! 地元SGでの勝利は格別だろう。今朝の開会式で、岡崎は「12年前の開会式でも言ったんで縁起が悪いんですけど……優勝します!!」とコメントしている。12年前の開会式……あれもここ福岡で開催されたメモリアル。岡崎は地元SGへの気合を「優勝します」と一言で表現した。ところが、優勝戦に駒を進めたものの、痛恨のフライング。1年間、SGから遠ざかることとなってしまった。縁起が悪い、とはそういうことだ。それでも、岡崎は今日もなんだかんだで、その言葉を口にした。普段の開会式では不愛想に一言、がんばります程度で終わる男が、ここまで言ったのだ。12年前を上回る思い入れでここに臨んでいると考えて間違いない。そして初日に1勝。今日見せた笑顔はつまり、気合のこもった笑顔だ。

 この10Rの外枠ベテランコンビ、今垣光太郎と原田幸哉は苦笑い。守屋美穂に2番手争いで競り負けた今垣、大きな見せ場を作れずに大敗した原田。今日は外枠に出番がほとんどないという流れの一日なのだが、百戦錬磨の両雄をもってしても上位には食い込めなかった。カポック脱ぎ場へと向かう際、原田が今垣に声をかけると、今垣はヘルメットをかぶっていてもわかるくらい顔をクシャクシャにして苦笑い。原田もつられて苦々しく笑い、ベテラン同士が寂しく笑い合うという構図ができてしまったのだった。

 ところで、4RでSG復帰戦で勝利をあげた丸野一樹は、レース後はペラ調整と試運転に明け暮れた。10R発売中に切り上げたのだが、何しろ猛暑の福岡ボート、丸野は汗だくで顔をしかめて、ふうと大きく息をついた。暑いなか、本当にご苦労様! だというのに丸野はこちらの顔を見るなり、「こっちのほうがぜんぜん楽しい」。顔つきとは正反対の言葉を口にしたのだった。こっち、というのはもちろんSG。今年はしばし一般戦回りを強いられて、久々にやって来たSGのピットはやっぱり楽しい、というわけだ。そう、丸野一樹よ、あなたはいるべき場所に戻ってきた。厳しさも一段と大きいだろうけど、ここで戦うべき男なのだ、丸野一樹は。「やっと戻ってきましたね」と、勝利の感慨も口にした丸野。明日からも精一杯楽しんで、苦しんで、いい結果を残せ!

 その丸野と入れ替わるようにして水面に降りていったのは高田ひかる。高田はその直前まで整備室で本体整備をしており、てっきりそれが今日最後の仕事だとばかり思っていた。ところが、整備を終えた高田はモーターを装着、試運転へと飛び出していったのだ。高田がカポックを手にボートへと駆けていく姿を見て、びっくりしました。今日はまったくいいところがなかっただけに、高田はとにかくもがいた。試運転組がボートを引き上げるような時間帯に、改めてボートを下したのだ。高田にとって苦しい局面となっているが、ぜひ高田もこの苦しさを楽しいと感じられるようになってもらいたい。それが女子二人目へと続く、大きな足がかりとなるだろうから。

 整備といえば、8R後には赤岩善生がやはり本体整備に取り掛かっていた。前半記事で書いたとおり、低勝率ワーストモーターを引き当てた赤岩は、1R後にも整備をしている。部品交換については、1Rではキャリアボデー、8Rではキャブレターと本体以外の部品だったわけだが、つまり本体から外回りからすべてに手を入れているということである。それでいて、今日は3着2本としのいだ。さらに上向かせるべく、赤岩は8R後の時間をとことん使い切る構えだ。

 さてさて、今日も開会式でファンをおおいに沸かせた西山貴浩。しかし5号艇で登場した7Rは5着大敗。レース後はプロペラ調整所でガンガンとハンマーを振り下ろし続けるのだった。9R終了後には、瓜生正義先輩が出走していたにもかかわらず、しばらくハンマーを打ち続けた。勝った井口がそろそろボートリフトに差し掛かろうか、という段階でも動かず、ガンガンガンガンガンガンとかなり強く、おそらく50発ほど叩いてから、瓜生がリフトでせり上がってきたころにようやく、エンジン吊りに向かったのである。これもまた“ギリペラ”というやつか。エンジン吊りが終わればまた調整所へ。西山は今日、いったい何度ハンマーを振り下ろしたのだろう。徹底的に叩き替えていたのは明らかで、明日は足色に変化があるかも。できるだけ舟券に絡む、と宣言した開会式を有言実行とするよう、気合も高まることだろう。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)