BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――初日を走って

 この舞台に来る選手たちは当然、一流のプロである。だから前検で走って、ある程度の感触は得られるわけだが、それでも「レースを走ってみなければわからないことがある」ともよく耳にする。だから初日はどんな手練れになっても緊張するものだ、と。今日レースを戦ってみて、疑問や不満が生じれば、このクラスの選手たちは(そうでなくとも)すぐ動く。前半の記事で、1Rを走った選手たちが速攻で動いたことを記したとおりだ。同じような動きは、後半でも見られた。たとえば徳増秀樹。9R6号艇で、見せ場なく6着。まるで表情なくピットに上がってきた徳増は、着替えを終えると即座に整備室に入った。レースを走ったことでわかったこと、それも足りない部分をはっきりと掴んだのだろう。整備に残された時間は3レース分のみ。そこでなんとかやれることはやり切ろうと、速攻で本体をバラしたわけである。

 7Rで6着に敗れた渡邉優美は、外回り調整をとことん行なっていた。整備士さんに相談しながら、足りなかった思った部分を埋めるべく、整備室にこもったのだ。また、その後はプロペラ調整も熱心に行なっている。SG2節目で、この舞台ではチャレンジャーと言うべき存在ではあるが、そうした部分とは関係なく、ただただ結果を残すべく、懸命に相棒と向き合うのである。

 やはり今日は6着だった谷野錬志(5R)は、水面を走ることで活路を見出そうとしているようだった。終盤の時間帯になっても試運転を続け、もちろんその合間にはプロペラ調整を行ない、徹底して足を煮詰める作業をしていたのである。しかも、陸の上では駆け足で移動し、わずかな時間も無駄にしたくないという意識が見えていた。「まだ成長しています!」と叫んだ開会式、その成長はこうした動きを繰り返すことがもたらしたものなのだろう。

 試運転といえば、吉田裕平は11R発売中まで続けていたのだった。1R1着で、今日は1回乗り。大雑把に言ってしまえば、ほぼ丸一日、水面を駆けまくったのである。それは調整と同時に、練習という部分もあったのかもしれない。ともかく、吉田は今日、間違いなく最も水面を走った選手ということになる。ちなみに2番目は高橋竜矢だ。2Rでは残念ながら敗れたが、吉田の直前まで、ようするにほぼ同じタイミングまで試運転をしている。SG初出場のヤング2人が、ひたすら水面を駆けた初日だったわけだ。

 さてさて、帰宿の1便は9R終了後。その9Rを勝ったのが石野貴之だ。見事なまくり差しでイン今垣光太郎を撃破。会心の勝利だろうと思うのだが、ピットに上がるとやけにソワソワしていた。山崎郡が「石野さん、1便でしょ?」と聞いていたので、なるほどと膝を打つ。1便で帰るために、急げ急げ! というわけで、赤いカポックを身に着けたままインタビュールームに駆け込んだ石野。JLCをご覧になっていた方なら目撃したでしょうが、レース直後にそのまま、勝利者インタビューを受けた石野なのでした。

 敗れた今垣のほうはといえば、対照的にというか、1便では帰らずに居残り。整備室で本体と向き合ったかと思えば、いつものルーティンであるボート磨きも行なったりして、残りの時間もたっぷりと使って仕事をしたのだった。まあ、これがまた今垣らしさというか、急いで1便で帰るところを見たことがない。まさに彼のスタイルなのだ。もちろん、その後のエンジン吊りにもきびきびと参加してました。気づけば50代半ばの光ちゃん、その動きや行動を見ているとベテランとは思えないのである。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)