やっとレースができる足になりました! 目の前を通り過ぎようとした宮之原輝紀が、こちらに気づいて立ち止まり、そう報告してきた。宮之原のお父様が元整備士さんで、その当時からお世話になってきた縁もあって、ピットではよく話しかけてきてくれる輝紀。だが、今日の朝まではなんとなく避けられている感じもあって、俺なんかしたっけなあなどとも思ったりしていたのだった。ようするに、足が仕上がらずにもがいていた、のである。セット交換を施して登場した8Rは6号艇で4着という結果ながら、明らかに足に進展が見られた(そう、宮之原が18人目!)。視界がぱーっと開けて、このハゲデヴもその中に入ってきたということだろう。足の良し悪しはやはり選手のメンタルにおおいに影響する。
山崎郡は初日の1走目にセット交換で登場、しかし足はどうにも苦しく見えていた。上向いたのは、さらにキャリアボデーを交換した昨日から。明らかに初日よりは動いている気配で、8R1号艇は逃げ切り1着。明日の勝負駆けに望みをつなぐこととなった。8R後にスポーツ紙の記者さんの取材に応えている様子が耳に届いてきたが、声に力が漲って、弾んでいるようにも聞こえた。結果以上に機力アップの感触が山崎のテンションを上げたのだ。その後は選手仲間と笑顔を交わしたりもしており、機力だけでなく気力も上向いている様子。明日は6号艇で決して楽な勝負駆けではないが、気合のこもる一戦となるのは間違いなかろう。
平本真之はセット交換をしていない組の一人だが、やはり手応え的には悪くなさそう。得点率も準優圏内につけて、明日の予選最終日に臨む。9Rは差して2着。エンジン吊りでは敗れたものの笑顔を見せていて、感情を隠さない男がその様子ということは、2着とはいえゴキゲンなのである。レース後はプロペラ調整に向かっているが、その足取りがまた力強い。ピットで見る様子と足色はもちろんリンクするとは限らないのだが、平本に関してはまあまあ近いものがあるのかもしれない(笑)。
10Rは馬場貴也が逃げ切ったが、道中、冷や汗をかいたに違いない。峰竜太の猛追を受けたのだ。3周目ホームではかなり接近されており、それで焦ったか、3周1マークは馬場にしては頼りないターンにも見えた。それでもなんとかしのぎ切っての勝利。ピットに戻って峰と顔を合わせると、当然のごとく、苦笑いがおおいに混じった表情で笑い合うことになるわけである。
峰は、交わせはしなかったが、あの馬場貴也を追い詰めたのだから、足色にもレースぶりにも手応えを得たのであろう。苦笑い成分はほぼなしの笑顔である。「ウイリーを間近で見せてもらいましたよ」とおべんちゃら(?)も忘れない(笑)。いや、間近で見られるところまで追い上げましたよ、という威嚇ですか? ともかく、やけにテンションが高いのである。
その高揚感はカポック脱ぎ場に辿り着いても冷めることなく、大きな声で戦った選手たちと感想戦を行なっていた。それにつられたのか、5着に敗れて悔しいはずの赤岩善生まで笑顔! さらには6着大敗の岡崎恭裕も笑みを浮かべていたのであった。ちょっと力弱い表情ではあったけど。峰の放つオーラにみんな巻き込まれちゃったんですかね(笑)。
さてさて、そんな峰とは対照的に、疲労感いっぱいだったのは西山貴浩なのである。10R発売中まで、時間を目一杯つかって試運転を走りまくった。今日はそれほど気温は高くなかったが、湿度はそれなりに高かったから、汗だくのニッシーニャ。そりゃまあ疲れるよね。今日の6着大敗で、準優進出は絶望的となった。しかし、このままで終わるわけにはいかない。そう腹をくくって、パワーアップに精を出したのである。整備をした気配もあるぞ……。明日はようやく回ってきた1号艇。5号艇には宿敵・峰竜太もいる。意地を見せろ!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)