BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――上條が本体整備!?

 優勝戦メンバーで唯一、セット交換を施していないモーターを相棒に勝ち上がったのが上條暢嵩である(平本真之は今節、自身では行なっていないが、前節に施されている)。“純正モーターの星”などとも言われたりしているわけだが、その上條が1R発売中、本体を外した。えっ、上條もついに……。
 写真を撮ったりジロジロ見たりしていると、上條も注目されていることを自覚していて、ニヤニヤと笑う。やるの? そんな目で見ていたら、「セットじゃないですよ。リング換えたら、ちょっと違うなって」。どうやら朝のうちにピストンリングの交換を行なったのだが、しっくり来なかったらしい。機力には好感触を得ていたものの、やはり優勝を狙うなら少しでも上積みを、とセットではない整備に取り組んだのだろう。しかし、それで上向いてはいないと感じて、おそらく元に戻すのだと思われる(別のリングを試す可能性はある)。まだ序盤の時間帯だから心変わりがあってもおかしくないが、上條はあくまで“純正”でセット組に勝負を挑むつもりのようだ。その心意気や良し。

 早くから水面に出ていたのは宮地元輝。オールスターと同じ2号艇での優出、今度こそはの思いでとことん調整をし尽くす腹積もりのようだ。オールスターではリング交換で上積みをはかったが、今日はとことんプロペラと向き合うことになりそう。3R発売中まででも何度も何度も、水面とペラ室を往復する姿を目撃している。納得がいくまで、これを続けていくのだろう。

 池田浩二は、2Rのエンジン吊りに出てきて、そのまま自艇のもとに向かいペラを手にすると、黙々とペラ室へ。途中、西山貴浩が歩み寄って何か声を掛けたが、軽くうなずくだけだった。池田もここからペラを煮詰めていくことになるか。

 平本真之は何度か整備室に出入りしていたが、まだまだマイペースでの調整の段階のようだった。顔を合わせると、おはようございます!と朗らかに挨拶してくれるのはいつも通り。気合が高まっていくのはこれからだろう。

 西村拓也は1R発売中にはまだモーターを装着もしておらず、2R発売中になって動き出している。5号艇5コースから予選トップの徳増秀樹をぶち抜いての優出、セット交換が効果が最も認められる一人ということもあってか、やはり注目度は高い。そうしている間にも多くの報道陣が声を掛けているのだった。あのまくり差しを見てしまうと、今日もまた……と気になるのは当然。西村はそのひとつひとつに飄々と、また丁寧に応えているのだった。

 最もマイペースなのは土屋智則だろうか。モーターからペラは外されているものの、エンジン吊りに控室から出てくるのを見かけたのみだ。そんな土屋が、2Rのエンジン吊り後に声を掛けてきた。「今日は逃げますか?」。土屋は一昨日の「展望BOATBoy」を宿舎で見ていたらしい。YouTube生配信だが、尺を調整して編集したものがJLCでも放映されているので宿舎では視聴可能なのだ。一昨日といえば準優展望で、僕の予想は「土屋は差され率が高いので、差されての2着付け」だった。これはもちろんハズレ。そう、土屋は逃げ切って、僕の見解の甘さを粉砕しているのだ。実は昨日も「逃げましたよ」と声を掛けられ、僕はもう平謝り。あ、土屋は別に怒ってるんじゃなくて、からかいに来たわけです(笑)。どうやら昨日は見ていないようなのだが、僕の予想は……後ほど“本紙予想”で。土屋自身、モーターの仕上がりには手応えがあるようで、またSG優勝戦1号艇はすでに経験し、重圧を克服する成功体験もあるから、実にリラックスした様子だった。少なくとも、本来の力を出せるメンタリティではあると思うぞ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)