BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――貫禄!

 ヤングダービー初出場が19人。実に3分の1以上である。前検のピットを見渡すと、やはりなかなかフレッシュな光景が目に映る。さすがにレディースvsルーキーズとは少々違って、初出場の面々でも顔と名前はしっかり一致はしているのだが、しかしピットでの立ち姿が見慣れなかったりして、咄嗟には名前が出てこない若者が目の前を通り過ぎたりする。今年デビュー初優勝を果たし、その後も積み重ねて4Vをマークしてブレイク中の藤原碧生もその一人。会釈をしながら走って通り過ぎた瞬間に、こちらも会釈を返しながらも「えーっと……」とか名前を必死で思い出したりして。竹間隆晟もまた同様で、その男らしい風貌は頭にはあったものの、いざ作業をしている様子を見てみると、一瞬「えーっと……」になってしまった。すみません。明日からは藤原も竹間もすぐにわかります!

 パンチパーマがトレードマークの仲道大輔はさすがに速攻でわかります。あの風貌、派手なレーススタイル、西山貴浩にも可愛がられているらしいキャラ、などなど、目立つ存在であるのは間違いないが、けっこう折り目正しい真面目な好青年なのですね。で、今日はボートを下ろすよりも前に、プロペラ調整所に根を生やしていた。好機を手にして、出るか仲道スペシャル。それを関係者も期待しているということなのか、初日はいきなり6号艇! まずは直前情報で発表されるチルトに注目しよう。もっとも桐生は1度までしか跳ねられないのですが。

 そうしたなかで、やはり貫禄たっぷりなのが羽野直也である。今回が7回目のヤングダービー。といっても昨年はGⅠ優勝戦Fのペナルティで出られなかったから、それがなければ今回は8回目のはずだった。初出場が17年蒲郡だから、もう7年も前のこと。そして今年は最後のヤングダービー。あの羽野キュンが30歳になるのかと変に感慨深くなってしまうが、そうでなくても今日の堂々たるたたずまいを見ていたら、もうキュンとか言えないなと思うわけです。

 関浩哉も7回目のヤングダービーだ。18年に初出場し、いきなり初優勝。その後も20年、21年、23年と優出。大会相性は超抜である。羽野にしても関にしても、もはやSGのピットで会うのが日常だから、やはりここでの存在感は群を抜いている。記者会見でも優出はノルマというような意味のことを言っていて、そのうえで今回はとにかく優勝したいと続けている。地元大会でもあるだけに、関には大言壮語するだけの資格がある。

 同じく7回目の出場なのが野中一平だ。ヤングダービーの水神祭、といえば野中一平。毎年おおいに楽しませてもらってきました。その野中も今年でラスト。水神祭参加は去年、卒業宣言をしていたが、本当でしょうか? そのあたりも注目の的だが、そろそろ自分の水神祭もしたいですよね。つまりは結果を残したいラストヤングダービーである。今日は前検航走後は整備室にこもって外回りを入念に調整していた。顔を合わせれば朗らかに接してくれる野中だが、おそらくかなり本気でてっぺんを狙っているものと思われる。

 ドリーム1号艇の宮之原輝紀はこれが6回目の出場。今年26歳だから、あと3年出場資格があり、順調なら9回出場の快挙となるところだったが、すでに来年は出場できないことが決まっている。前節、津周年の優勝戦でFを切り、F休み明け後から1年間、GⅠとGⅡには出場できないのである。少しだけ話したが、まだ引きずっている感じがします。宮之原は三島敬一郎も高く評価する22号機を手にしたが「足かせがない時に引きたかった」と口にした。それはその通りかもしれないが、F持ちでSGやGⅠを優勝した選手はゴマンといるのである。スタートで無理できなくても宮之原のテクなら充分に戦える。何しろ選考順位1位なのだ。なんとか切り替えて頑張ってもらいたいのだが。

 ドリーム6号艇の佐々木完太もF持ちだが、こちらは記者会見で饒舌に手応えの良さを語った。ドリームも外枠とはいえ侮れないと感じられたし、2日目以降も楽しみ。佐々木はこれが3回目のヤングダービーで、過去2回は徳山、下関といずれも地元大会だった。ところが、徳山ではF2での参戦でオール6コース(本人は、F2でなくともすべてアウトから行くつもりだったそうだが)、昨年の下関は途中帰郷の憂き目にあっている。関とは対照的に相性が悪い大会なのだ。それだけに、好感触のモーターを手にした今節は意気も上がったことだろう。もちろんSには細心の注意を払いつつ、奮闘を見せていただきたい。

 さて、三島がS評価を付けた51号機を引いたのは井上忠政。4回目の出場で、彼もまだ結果を出し切っていないだけにこのチャンスは何としても活かしたい。その井上が前検航走後に、なんと本体を割った! エース機をいきなり!? まさか前検航走で何か異常が!? あまりに驚いたので声を掛けてみると、前節の和田拓也が新品のピストンリングを2本交換していて、これがどうにも違和感ありだったそうなのだ。ターンでスカるのを新品リングで押さえ込んでいたということのようだが、それを井上はプロペラで押さえようとリングを元に戻す作業をしていたというわけだ。「これでペラに焼きを入れれば明日の初日には間に合う!はずです」と笑って、ペラ室に駆け込んだ井上。1Rは3号艇、さらに7Rで4号艇と、井上の持ち味を発揮できる中枠が回ってきた初日である。まずは3R、エース機パワーを引き出しての活躍を楽しみにしたい。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)