ヒリヒリした空気があまり感じられないのは、選手たちの世代が近いからだろうか。準優組にしても、近くに同期がいる。先輩といっても数期上だったりするから、近しい関係にある選手同士というのも多い。また、ルーキーシリーズが年間24節も開催されている今、同じ斡旋になるという選手も数多いだろう。たとえば羽野直也はSG・GⅠを主戦場にする格上ではあるが、かといって年が近い先輩である(しかもその羽野はまさかの予選落ち)。準優だからといって怯んだりするような、そんな空気感がないほうが当たり前かもしれない。
今節は5000番台がついに過半数となっているヤングダービーである。しかし、予選突破したのは圧倒的に4000番台。5000番台は畑田汰一、澤田尚也、末永和也、定松勇樹、そして藤原碧生。やはり、藤原の名前はおおいに目立つ。GⅠ初出場であり、今節最も期が若い129期生。ちょっと気後れしても当然の、そんな立場である。しかし、やはり藤原にもそんな雰囲気は見当たらない。竹間隆晟、藤田俊祐と同期が2人いるし、期が近い面々も揃っている。まあ、藤原が強心臓という可能性もあるけれども、少なくとも怯んだりするようなことはないだろう。
少しだけ雰囲気が違うと見えるとするなら、やはり関浩哉である。予選トップ通過の準優1号艇、しかも地元ヤングダービー。さらに言えば、これが最後のヤングダービーである。思い入れが他とは違うのはこれも当たり前のことだし、だから緊張感を漂わせるのも当然のこと。グランプリシリーズとはいえSG優勝戦1号艇を経験している関だが、それでもプレッシャーはそのときとそう変わらないだろう。早くから水面に出て、調整も懸命に行なっている関だが、万全を期してという思いが普段より強くなっていたとしても不思議はない。
やはり準優1号艇の川原祐明も、1R発売中にはすでに試運転に出ている。他の選手が試運転を切り上げ、水面には川原だけとなったとき、いわゆるイン水域のあたりでスローダウン。小回りブイのあたりから起こして、そのまま真っすぐ駆け抜けて1マークをターン。あたかもイン逃げのリハーサルを行なっているような、そんな場面もあった。川原も最後のヤングダービーだけに、結果を欲していることだろう。
もうひとりの1号艇である畑田汰一は、2人に比べればゆったりと過ごしているように見受けられた。序盤の時間帯にはまだ調整を始めていないようで、姿を見るのはおもにエンジン吊りだった。また、JLCのインタビューも受けていたが、かなり落ち着いているように見受けられた。122期は今節7人と一大勢力、そのなかで唯一の準優メンバーである。仲間が周囲にいつも取り巻いているのは心強いことだろう。
整備室で姿を見かけたのは入海馨だった。2R発売中にモーターを装着したのだが、見かけたのはリードバルブを調整している姿。ただ、それよりも前に本体整備を施した可能性はある(↑中尾の写真を見たら、していた!)。昨年のヤングダービーは予選トップからの優勝戦1号艇だったが、無念の3着。涙も見せていた入海である。今年は準優4号艇だが、枠番こそ違え、やはり雪辱の思いは強いだろう。記念は先月に制したが、ヤングダービーでのリベンジはまた別の話。こちらも果たすべき宿題である。
前田篤哉が、こちらの顔を見るならヌハハハハと笑った。昨日の12R後、悔しがってみせた前田だったが、18位に残った。やはり本人はまさか滑り込めていたとは思ってもいなかったそうで、そのことについてヌハハハということであろう。そういう立場だから、かなりリラックスしている様子。しかし、「流れはある」と希望も欠けていない。前田の6コース2連対率は実に30%もありますからね。無欲の優出、あるかも!?(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)