BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――がんばれ!

 試運転からいったんあがってきた今垣光太郎が、ダッシュで装着場を横断。もう52歳だというのに、相変わらず若々しい。1本の柱の前でストップし、軽く視線を上にあげる。それが写真なのだが、今垣の視線の先にあるのは温度計だ。24場、すべてのピットに設置されているこの温度計は、湿度と気圧も表示される優れもの。ここでそれぞれの数字をチェックするのは、すべての選手のルーティンのようなものである。試運転での感触が、果たしてどんな気象条件のもとで得られたものなのかを、今垣は速攻でチェックしたというわけだ。

 今垣が去ったあとに僕も確認してみると、えっ、気圧が1000.3hPa? これはかなり低いのではないか。気圧が下がれば回転が上がらない、というのがセオリー。気温29.3℃、湿度69.7%というのも回転が上がりにくい条件だと思うのだが(ともに高い)、気圧まで低いのだから、おそらく意外とインが利いていない理由はこのへんにあるのではないかと想像した次第だ。その後、篠崎仁志もここに来て、ふっと目を丸くしたりしていたが、気圧の低さを目にしたから? 元選手の湯浅康弘さんによれば、昨日よりさらに5hPaほど下がっているとのこと。今日は調整も難しくなっているかも。

 昨日まで厳しい足色と見えていた柳沢一は、どうやら本体整備をした模様。その姿自体を目撃したわけではないが、1R前にモーターを装着しているのを見かけたのだ。朝ゆっくりと過ごしているのでなければ、レース場に到着してすぐに装着しているはずなので、整備だろうと推測した次第。交換があるかは直前情報を要確認。

 毎日配信している『展望BOATBoy』で僕も畠山も散々話しているが、馬場貴也は素晴らしいターンを連発していながら、モーターがいうことを聞いてくれずに着を落とすというレースが続いている。昨日の11Rも決まったかと思えるほどの鋭い差しを放ったが、終わってみれば5着。馬場も「よしっ」と思ったそうだが、そこからの進み方は他とははっきり差があるようだ。毎日、必死に調整をしながらもなかなか上向かない足色に、ストレスも多かろうと思う。

 2Rの山田哲也も厳しい足色で、今日はセット交換で臨んだ。4カドから鋭いスタートを踏み込んで、一気に内を呑み込んだレースぶりは、まさに山田の真骨頂というべき見事なものだったが、田村隆信のまくり差しが入り、2コースから換わり全速を放った椎名豊もズッポリと捕らえ、山田は終わってみれば4着である。山田もまたストレスを抱える毎日だと思う。レース後はやるせない表情だったが、それもむべなるかな。機力劣勢の面々も、調整が難しい気象条件のなかで日々奮闘し、見どころのあるレースはやってのけている。節後半のどこかで、それが実ることを願いたい。

 そうそう、初戦で転覆して以降、大敗を並べてしまっていた前田将太が、1Rで2着。ようやく舟券に絡む走りを見せた。レース後の前田は、やはり一息つけたといった感じで、勝った大上卓人と笑顔を交わしていた。前田も連日、調整に汗を流してきた。残念ながら途中帰郷となってしまったが、最後に前田らしい柔らかな表情が見られてよかった。他の選手たちもレース後にそんな顔を見せてほしいもの。がんばれ!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)