握って握って……
11R
①平山智加(香川) 17
②遠藤エミ(滋賀) 13
③高田ひかる(三重)13
④三浦永理(静岡) 09
⑤川野芽唯(福岡) 18
⑥田口節子(岡山) 13
1号艇でも勝てなかった。平山だ。怖い怖い3カドの高田がスリットからさほど伸びず、1マークの手前で「焦点は智加が逃げるか、エミが差すか」に絞られた、かに見えた。そして、私の脳内レース/ひかるが伸びなかったverでは、昨日の行き足が半端なかった平山がやや出足が甘めに見えた遠藤を完封シャットアウトで逃げきる、という光景ばかりが浮かんだ。
だが、現実は逆だった。まずは平山の行き足に昨日ほどの迫力がない。可能性としては、遠藤が質のいいスタートを行き、平山はアジャスト加減だったか。スリットからやや遠藤が圧迫する見え方で、それから平山が伸び返して1マーク手前で舳先が揃う。
やはりコースの利で平山か。思った矢先、平山のインモンキーは明らかに握りすぎで明後日の方向に流れた。あれは何だったのか。結果的に3コースから握った高田をブロックするターンではあったが、ほぼ見えない高田を仮想敵に据えたとは思えない。スタートでの余裕のなさが響いたか。それとも、あれなのか。昨日、黒須田が言ったセリフを思い出す。
「8月のレディースチャンピオンの優勝戦、同じ枠番で平山は遠藤にまくられてるんですよ」
仮想敵は、4カ月前の悪夢だったか。真相は分からない。分からないが、握りすぎて流れた平山を、遠藤だけでなく4コースの三浦までずぶずぶに差し抜いた。第1戦は3コースから握って飛ばされ、第2戦は2コースから無理気味のジカのまくりで飛ばされ、今日はインコースから自分で握って飛んでいった。三島敬一郎のイチ推し29号機は、3戦連続で好枠を生かしきれずにトータル19点。ファイナル進出へ、首筋の凍るような数字で結果を待つ身となった。。
2コースから差し抜けた遠藤は余裕の27点で、ファイナル2号艇以内が確定。1号艇を巡る争いは、12R2号艇の浜田亜理沙が2着以内なら浜田、3着以下なら遠藤だ。(つづく)
悲喜こもごもの着順
12R
①守屋美穂(岡山) 11
②浜田亜理沙(埼玉)15
③寺田千恵(岡山) 10
④渡邉優美(福岡) 07
⑤大瀧明日香(愛知)06
⑥長嶋万記(静岡) 07
大本命の守屋がしっかりインから押しきった。3コースから握った同県の寺田を寄せつけず、見た目には第1戦に続いてパーフェクトな逃げきり圧勝。だが、守屋自身は昨日からかなりナーバスだったようだ。ガラポン抽選で白玉を引き当ててもクスリともせず、逆に憮然とした表情で何事かに思いを巡らせていた。
今日は今日でこの一戦に集中するために、いつものルーティーンを割愛した。
「(昨日まで)足合わせをすると劣勢だったので、今日はやりませんでした」
つまり、パワー劣勢を自認し、今日は精神力と集中力だけで乗りきった。と意訳できるだろう。ナーバスな言葉はつづく。
「このままでは厳しそうなので、明日の本番までに上積みを目指します」
明日も朝から神経を擦り減らす戦いが続きそうな守屋だ。
さて、このレースの大きな関心事は、守屋の背後にもあった。先に触れたとおり、【2着以内でファイナル1号艇】の浜田が、まんま2着争いを演じていた。1マークで3~6号艇が全員握ったところ、2コースから慌てず騒がずしっかり落として小回りターン。
ギリギリ2番手に残した2マーク、ひとつでも着順を上げたい大瀧、寺田、渡邉らが浜田の左右に殺到したが、冷静的確な握りマイで後続を突き離した。元よりターンスピードや捌きの達者さは承知の上だが、大舞台の2着条件でガッチリ2着を取りきったレースっぷりに天晴れを贈りたい。
さらに浜田の後方でも、トライアル最終レースならではの死闘が続く。11Rの結果を受けてのラストバトル。誰がどこまで条件を把握していたか定かではないが、現実の水面ではファイナル⇔順位決定戦の入れ替えが何度か起こっていた。11Rで19点だった平山も含めて。寺田×渡邉のデッドヒートで順位が入れ替わるたびファイナル6号艇は寺田だったり平山だったりしたのだが、最後に寺田が競り勝ち自力でファイナル入りを決めた。さすがのテラッチ、明日は6号艇から憧れるのをやめたティアラを奪いに行くことになる。(photos/シギ―中尾、text/畠山)