BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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TOPICS初日

明日のブライトホース

レッドタイガー、発進!!

5037田頭虎親(122期・香川支部)
★今日の成績=7R5号艇3着
☆明日の出走=4R2号艇・9R6号艇

「タドウ」ではなく「タガシラ」。この姓に勇ましい名前が続いて「タガシラトラチカ」。まるで戦国武将のような雄々しいフルネームだ。そして、今朝の10時過ぎ……。
――今節はレッドゾーンまで叩き込みます!
 選手紹介で発したセリフも、戦国武将さながらの剛毅なものだった。この手の発言としては井口佳典の「ぶち込みます!」が有名だが、言葉のインパクトしてはコッチの方がはるかに強い。

「レッドゾーンまで逝ったらダメだべぇ……けど、おもろいやっちゃな」
 私は少し呆れながらも、なんなら“レッドタイガー舟券”でも買ってみるか、などと思ったものだった。で、いざ実戦。7R5号艇の虎親クンのスタートタイミングは……
 コンマ26。
 5コースの早起こしから露骨にもみもみアジャストし、情けないほどのブルーゾーンに叩き込んだ。
「もしかして、レッドゾーン=絶対に勝てないゾーンってことなのか、おい!」
 うっかりアタマ舟券を買った私は嫌味な言葉を発してしまったが、きっと明日こそは戦国ソルジャーっぽい踏み込みを見せてくれるだろう。

 122期・虎親クンの養成所リーグ成績は4.07。原田才一郎、安河内健、若林健人、中村日向、中亮太、平川香織などの精鋭エリート軍団がブイブイ云わせるなかにあって、劣等生と呼ぶべき数字だった。私は2018年3月の養成所記念レースを現地取材したが、彼について覚えているのは“名前”のみ。
「田頭実さんの親戚かと思いきや、読み方も出身もぜんっぜん違うのかぁ」
 ガチでこれだけだ。安河内・弟や才媛・平川などの夢はずむ声に聞き惚れている間に、虎親クンの存在すら忘れ去っていた。デビューしてからも。彼が嬉しい水神祭を遂げたのは、デビューからぴったり1年と10カ月。217走目での初勝利だった。

 だがしかし!!
 それからさらに3年の歳月が流れたいま、タガシラトラチカは当時とは別物のレーサーに変身した。今年に入ってからの勝率は5.73で、すでに来期のA2級は約束されている。2月の四国地区選では、初日に5コースまくり差し圧勝。54390円という大穴配当とともに、「GI初戦で水神祭」という離れ業をやってのけた(返す刀で2走目もイン逃げでピンピン連勝~その後は崩れて予選突破ならずw)。直近の勝率は、同期の首席だった若林とほぼほぼ互角の数字をマークしてもいる。

 で、今年になってブレーク中の虎親クンは、いったい何が変わったのか。いろんなファクターが浮かび上がるが、興味深い数字は【平均スタート順位=2.8位】だ。過去3年の【3.3位】から、今年はいきなり突出の【2.8】! この大きな差がスリット~1マークで主導権を握り、強気強気で攻めきる原動力になっているのだろう。
――今節はレッドゾーンまで叩き込みます!
 もちろん、キワまで攻めるのはご法度としたものだが、この雄々しいセリフは今節の私の胸にしっかりと焼き付けておくとしよう。少なくとも、明日の【9R】までは、必ず(笑)。

 続いて、初日を過ごしての所感をば。
 いよいよ【団体戦】というテーゼが参加選手の間に浸透したのかも?
 そんなことを、じんわり思わせる1日だった。まず、開会セレモニーの選手紹介で大半の選手が同じような言葉を発していた。
「レディースに貢献できるよう頑張ります」
「紅組の応援。よろしくお願いします」
「男の応援もよろしくお願いします」
「強い強い紅組をスピードでやっつけたいです」
 などなど、男女ともにライバル意識を露骨に表現していた。そりゃどの大会でも似たような“マウスバトル”が起きるのだけど、第11回目を迎えた今回は図抜けて多かったと思うぞ。

 とにかく、第1回あたりは団体戦のルールすら知らない選手が何人もいたけど、もうそんな時代ではなくなった。過去の【紅組5V×5V白組】という拮抗した数字も、選手の闘争心を煽っている気もするし、団体戦ならではの「過去の大会で迷惑をかけた」「最後の最後に逆転されて10万円の臨時ボーナスがもらえなかった」などのトラウマを持つ選手も増えたはずだ。
――今節の紅組の皆さんはとてつもなく強いので、僕は美容整形外科に行って整形して女子になります!
 同じく開会式で中亮太がジョーク交じりに話していたが、こんなセリフすらも「ずいぶんと浸透したもんだ」なんて思ったり。
 で、5Rから団体戦がはじまってみたらば、随所に「これって団体戦を意識してんじゃね?」と思える光景に出くわした。ざっと羅列しておこう。

【5R】白組代表の⑤石原翼が内の④原田雄次をツンツン突いて「ほれほれ、雄次、はよまくれーー」と促し、その“指令”に応えるように原田が豪快な絞めまくり。外のふたりがぴったり連動=④-⑤-⑥決着で白組の完勝!

【6R】やられたらやり返せ! 今度は紅組の斬り込み隊長・高憧四季が4カドから強引な絞めまくり。惜しくもイン加藤優弥まで捕えきれなかったが、得点的に紅組勝利の原動力となった(レース後に加藤&四季が待機行動違反で引き分けに)。

【9R】2コースの②鎌倉涼が⑤荒牧凪沙の攻めをブロックしながらの握り外マイを選択。普通なら差して突き抜けもありえる展開だったが、白組の火種を絶やして紅組勝利を確定づける、そんな握りマイだった。

 まあ、どれもこれも単なる私だけの思い込みに過ぎないのかも知れないが、こんな妄想が膨らむ団体戦が意外と好きな私でもある。そうそう、明日は機力について触れる予定だけど、今日の全レースを観た限り節イチ争いは【倉持莉々38号機vs平川香織20号機】ではないかと値踏みしている。(photos/チャーリー池上、text/畠山)