内枠と外枠に各チームがまとまって振り分けられる団体戦において、「3コースはまくり差し」という考え方がある。まくれば内の2人=同チームを沈めてしまい、さらに外の3人=敵チームを引き出す展開になりかねないからだ。まあ、これまでの大会を見てきて、そういう傾向もあるのかなあ、と思ったりもするわけだが、しかしまくるときはまくるのがボートレーサー!
9Rは高田ひかるだ。3号艇なら3カド多用の高田がスローに入ったのは団体戦仕様だったのかもしれないが、しかしスリットからぐいぐい出ていけば、それはもう、まくるのである。あそこでまくり差しにいったら高田ひかるではない! このレースは結局、ルーキーズにポイントが入ったので、複雑な思いはあるかもしれないが、しかし先頭に立ってしまえば「あとは任せた!」で構わないのだと思う。実際、渡邉真奈美がいったんは2番手を走っていて(そのままならレディースにポイント)、これを男子勢が激しく追い詰めて逆転したのが白組の勝因。だからもう、高田ひかるらしさが溢れていた見事なレースだった、と評価すべきなのである。
もちろん、まくられて6着大敗の高憧四季は、高田と肩を並べて控室へと戻りながら、顔を引きつらせていたのであった。もちろん、1号艇を活かせずに敗れたことに対しての悔しさ。また、6着でなければポイントはレディースだったから、それに対する申し訳なさ。どうしてもネガティブになってしまうだろうが、いろいろなものが複雑に心中で絡み合っていたと思う。初日に待機行動違反をとられたり、前半も大敗したり、なんだか近頃リズムが悪い高憧だが、なんとかここらで吹っ切って、明日から元気に巻き返してほしい!
10R、3コースからまくったのは荒牧凪沙だ。3コースからすいすいと前に出ていって、定松勇樹を呑み込んだのだ。実にいい直線足でしたね。こうして出切ってしまえば、もちろんまくる! たとえインがルーキーズのエース格である定松勇樹であっても、まくって真っ向勝負なのである。
定松は、5着大敗で思い切り顔をしかめて、悔しさを隠さずにいた。控室へと戻る間、肩を並べていたのが荒牧。二人はボートリフトの前で長いこと会話を交わして、さらに話ながら控室へと消えていったのだった。9Rにしろ10Rにしろ、まくった人とまくられた人が一緒に帰っていったというわけです。やはり団体ポイントはレディースに奪われたこのレース、しかし今月末にはSG初出場の定松を勝率3点台の荒牧が沈めたという点で、ナイスレースだったと思うぞ!
で、勝ったのは平川香織で本日連勝! ここまで4戦3勝という活躍っぷりだ。デビュー前から大器と騒がれた平川が、この注目が集まる一戦でおおいにそのポテンシャルを見せつけている。足も抜群ですね。決して浮足立つことのないレース後も、大物っぷりが感じられて素晴らしい。出走表に記されている近況勝率は5.71。そう、来期は初A級! ここから一気にブレイクしても不思議ではなさそうだ。
足がいいといえば、倉持莉々もまた軽快な足色を披露しているわけだが、11Rは谷口知優がまくった引き波にズッポリとハマって、大きな着となってしまった。一時は6番手だったものが、あっさりと4番手には浮上していて、足の良さは間違いのないところだが、それでもレース後の倉持の顔色は悔しさでいっぱい。清埜翔子と話しながら、ずっと首を傾げているのだった。明日は12R1号艇。この借りを返す一戦!(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)