BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――もがけ若武者

 中村日向が、どうにも苛立っているように見えるのである。優出を果たした昨年は、ピットでは笑顔もよく見えていたという記憶がある。同期の中亮太とつるんで、明るく談笑していたりもした。今春のクラシックでは、初のSG参戦でフライングを切ってしまい、意気消沈している様子もありはしたが、懸命に、そして健気に動きまくる姿があった。雰囲気こそ違うが、鬱々としたところはあまりなかったように思う。しかし、今日の日向は明らかにイライラしていたと思う。完全に劣勢の相棒に苦しんでいる今節。今日はレース後も懸命に調整と試運転を繰り返していたのである。しかし、思うように動いてはくれないというのか。選手の気分はモーターの仕上がりに左右される。今節は有力選手の一人として参戦したはずがこの成績(3走して6着2本)。明るく笑えないのは当たり前だろう。

 中村魁生も、懸命な試運転を繰り返していた。魁生は、昨日も最後まで試運転をしていた一人。そして今日も、だ。初日は6コース6着、今日は2コース2着と、枠番通りの着となっていて、しかし足色にはまるで納得していない様子だ。日向のように機嫌が悪いようには見えないものの、しかし調整と試運転の手を緩めようとはしない。

 原田才一郎もまた、最後まで試運転をしていた一人である。原田の場合、とにかく好漢。試運転のあと、着替えを終えて整備室へと走るさなかにこちらを見つけると、大きな声で「お疲れさまでーす!」。6着4着の成績で、気分上々のはずがないのだが、それでも明るく礼を尽くすあたり、実に好感ですね。ただ、言うまでもなく、このまま終われないと、とことん調整を尽くすわけである。試運転後もすぐにモーターを格納せずに、作業に向かった。ひたすらもがく腹積もりなのである。

 そして、今日は6コース単騎からまくり一撃で勝った宮之原輝紀も、なんと最後まで試運転を行なっていたのであった。宮之原とは気軽に言葉を交わせる間柄なのではあるが、これまでなんとなく、機力に不満があるときには避けられているような気配を感じている。まあ気のせいというか、単に自分から誰かに話しかけるような余裕がないだけなのだろうが、だから向こうから話しかけてこないときは機力一息なのではないかと想像しているのだ。つまり、ここまで2勝をあげていても、まだパワー不足と感じている。そうでなければ最後まで試運転をしているはずもないのだし。たぶん、結果ではないのだ。あ、もちろんこっちから話しかければ、丁寧に答えてくれる好青年ですよ。

 整備室では岡部大輝が本体整備。ここまでゴンロクを並べる格好で、パワーアップの必要性を感じたということだろう。9R終了後、ピットには「1便の選手は集合」とアナウンスがかかっている。帰宿1便を競技棟前に集めるアナウンスだ。それを聞いた岡部は、整備室を駆け出て、管理の方に話しかけている。10秒ほど会話を交わすと、すぐに踵を返して整備室へ。おそらく、もともとは1便で帰る予定にしていたはずが、整備を続けたいのでキャンセル、ということだったのだと思う。勝つための予定変更はもちろんファンとしては歓迎! そうしてまでも整備を尽くしたかった岡部に道が拓かれることを祈ります。
 後半は厳しそうな選手たちの話ばかりになったが、これもひとつの経験として糧になるはず。おおいにもがいてもがいてもがいて、引き出しも増やして、未来へつなげてください!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)