BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――無念の帰郷……

 下の写真は、ボートの底部についているフィン。半楕円状の部品だ。1R、2マークで長嶋万記がまったく旋回できずに大きく流れた場面をご覧になった方もいるだろう。あれは、1マークでの接触で、このフィンが外れてしまったことが原因だ。この小さな部品がボートの底から外れれば、旋回でまったく制御が利かなくなる。おそらく長嶋は、直線を走っていたときには気づいていなかったはずで、2マークでハンドルを入れたときの驚愕と恐怖はいかばかりだったかと思う。これで長嶋は対岸に激突した際に頭部を打ったようで、途中帰郷となってしまった。レスキューは自力で降り、医務室にも歩いて向かっており、笠原亮によれば会話もできているとのこと。大事を取っての欠場という意味合いが大きいと思われる。箇所が箇所だけに気がかりは消えないが、ひとまずゆっくりと静養し、快復してもらいたい。

 1マークの接触は、まくり差そうとした前田将太とのもの。前田は5着でゴールしたが、ピットに戻ると顔を歪めて、明らかにどこかを痛めた様子だった。どうやら左肩から頸部にかけてを痛めたようで、彼もまた欠場・途中帰郷となってしまっている(6Rは1号艇で登場予定だった)。前田は2R発売中にモーター返納作業にあらわれており、福岡勢との絡みでは笑顔も見えていた。初のグランプリ行きを決めるのはチャレンジカップに持ち越しとなってしまったが、こちらもまたまずは負傷を癒やしてもらいたいところ。ともかく、こうした事故は珍しいことではないにしても、何度見ても肝を冷やすし、その点で慣れることはない。無事故を願わずにはいられないのだ。

 2Rは、またまた深川真二と西島義則が同居するレースだったのだが、この厳しい1号艇を青木玄太がクリア! エース62号機で注目された青木だが、昨日まではやや消化不良だった。最低目標の水神祭もなかなか遠く、1号艇が回ってきたとはいえ、この番組ではなかなか難しいものとも思われた。だが、青木はきっちり逃走! この1着は価値が高い。減点もあり、残念ながら予選落ちはほぼ確実だが、それでもこの勝利で青木は気分高揚! ピットに戻るととにかく笑いっぱなしなのであった。

 そんな青木に、前付けで起こしを深くした西島義則もごめんよーと言いながら笑顔で祝福。西島としては、2着の展開を伸び抜群の重成一人にパワー負けで3番手後退ということで悔しそうな表情も見せていたのだが、青木に対しては優しい笑顔を向けたわけだ。

 2コースだった深川真二も、青木の笑顔での挨拶に笑顔で呼応! シンガリ負けで複雑な思いはありそうだったものの、深い起こしを克服して逃げた青木に対しては、ただただ称える思いが強いようだった。

 同じレースではないけれども、出迎えた馬場貴也や、大先輩になる田中信一郎も、青木のとびきりの笑顔につられたというわけでもないだろうが、満面の笑みで青木のSG初勝利を喜んだ。それがまた、青木の笑顔をさらに深くするという。童顔の青木だけに、その笑顔は実にキュート。その効用だろうか、2R後のピットには笑顔が充満していたのであった。

 ただし、大敗で予選突破がぐっと遠のいてしまった菊地孝平だけは、そうはいかなかった。視線を下に向け、どこか憤り冴え感じさせる硬い表情で、黙々と控室へと戻っている。好機を手にしたはずが、思わぬ苦戦続きの予選道中。思うにまかせぬ結果に、己を責めてもいる雰囲気なのであった。後半10Rは1号艇。逃げて少しでも望みをつなぎたいところだが……。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)