BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――天王山の幕が開く

 ピットに足を踏み入れた瞬間、のけぞった。整備室の入り口にグランプリ仕様のカラーリングを施されたボートがずらり! しかも、今日初戦を迎えるトライアル2nd組が見事に並んでいるではないか。あともう1艇は桐生順平だったので、賞金ランク上位7名のボートがそこに集結していたというわけである。

 そこにボートがあるということは、選手自身は整備室にいるということだ。峰竜太以外はすべて本体が外されており、一斉に本体整備に取り掛かっているということだ。峰はギアケースを装着していたので、外回りの調整だったか。あとは軒並み、もちろん点検を含めてだろうが、本体を割っていたということである。初日の朝にドリーム戦出場選手が本体を割っていることは珍しいことではないが、ここまで勢ぞろいするとなるとさすがに見た記憶がない(ドリーム戦も2nd組も選出上位選手たち)。トライアル2ndでもこんな光景があっただろうか?

 磯部誠が整備を始める前にキャリアボデーとの接地部分を丁寧に磨き始めた。軽く目が合ったので会釈をすると、磯部は視線を外し、キャリアボデーに向けながら小さく会釈を返した。ともすれば礼儀に欠ける態度にも見えるが、そうではない。それほど作業に没頭しているということだ。そして、いよいよ迎える戦いに意識を集中しているということでもある。

 2R発売中には茅原悠紀がいち早く本体を装着し、水面に出る準備を始めた。待ち構えたカメラマンのレンズが一斉に向けられ、しかし茅原はまるで意に介することなく作業を続ける。茅原も気合、集中力が高まっているのが明らかだ。
 いよいよ2ndが始まる! 黄金のヘルメットを争う天王山が幕を開ける! 1stの超短期決戦が苛酷なら、上位6人が合流する2ndは濃密。さらにコク深い戦いのゴングが鳴ったわけである。

 1stから勝ち上がった選手たちは、昨日まで積み上げた調整をさらに煮詰める。2ndが始まったから新たなことをやる、というわけではない。というわけで、ペラ調整室または整備室に設けられた調整所でハンマーやゲージを手にする姿を見ることになるわけだ(桐生以外は)。片岡雅裕は昨日のレース後、峰竜太にアドバイスを受けていた。森高一真が寄り添っていたが、峰の話を受けてか、片岡に言い聞かせるような口調で語りかけている姿も見た。それを活かしての調整だろうか、片岡はかなり鋭い視線をプロペラに向けていた。一度はシリーズ行きを覚悟しただろう片岡だけに、失うものはない。調整もレースも果敢な動きに期待したい。

 シリーズに目を向けると、トライアルから回った6人のカラーリングがシリーズ組と同じものに合わせられていた。視覚的にも彼らが1stで敗れたことを認識させられるわけで、なかなか切ない光景ではある。ただし、菊地孝平などまったく気落ちを感じさせない様子で調整などに飛び回っており、すでに切り替えは終了しているようにも見受けられた。

 それにしても山口剛よ……。トライアル1st初戦転覆。そしてシリーズ初戦フライング。昨日は気合の逃げ切りを決めたというのに、なんという激しすぎるアップダウン……。さすがに力ない表情となっていた山口。それがまた切なすぎる……。どうしてグランプリの女神は山口に背を向けてばかりいるのか。

 2R1号艇に組まれた土屋智則は田中信一郎にまくられて4着。昨日の前付けは素晴らしかったが、結果という意味ではトライアルでもシリーズでも消化不良が続いてしまっている。どうすればこの連鎖を断ち切れるのか……。レース後の土屋の表情からは精気が消えていた。見るのが辛い……。

 もちろん、シリーズ組はやすやすと1st組にデカい顔はさせられないところで、田中信一郎はしてやったりの思いもあるだろう。勝利者インタビューでは、イン11勝の昨日、唯一逃げられなかったことに自身でも触れていたが、その雪辱としては見事すぎる! 田中を出迎えた大阪勢は一様に爽やかな笑顔を見せており、田中もヘルメットの奥で目を細めていた。ちなみに、ちょうどそのとき目の前で西村拓也が3Rのスタート展示でバナレ飛び出して、大阪勢はさらに笑みを深くしたのでありました。これを書いている途中で4Rが終了。1st勢はまだ1勝もあげていない。シリーズ組の意地にも注目!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)