BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――特別な日、その中盤

 6Rが終了すると、すでにレースを終えた選手が徐々に管理解除となって帰郷し始めるので、ピットの人口密度はじわじわと薄くなっていく。7R頃、長嶋万記が「ありがとうございましたーっ!」と手を振りながら、予約していたタクシーへと走る。「じゃ、多摩川で!」。早ければ明後日、そうでなくとも水曜日にはクイーンズクライマックスで顔を合わせることになる。通常は、静岡支部の選手たちのレースが終わるのを待ったりするのだけれど、日程が詰まっていることを先輩たちが気遣って、先に帰したのではないかと思われる。ごく短い時間ではあるけれども、一息ついて身体を休めて、元気いっぱいで多摩川に来てくださいね!

 馬場貴也に、今年もありがとうございました、と挨拶された。まだレースは終わっていないが、レース後はドタバタになるし、また顔を合わせられるかが怪しいので、最終日には朝のうちから「今節は~~」と挨拶を交わすことは多い。見ていると選手同士でも同様だったりする。馬場はトライアル初戦の妨害失格をまだ悔いており、昨日と一昨日は「なんとか勝って、(勝利者インタビューに出て)直接謝罪したいと思っていたんですけど」と申し訳なさそうに言った。ファンに迷惑をかけた、だからお詫びの言葉をしっかり届けたいと、そう強く思っていたようだ。昨日も一昨日も勝つことはできなかったが、気持ちが伝わるレースを見せたと思う。というわけで、馬場になり替わって、彼の気持ちをここに書いておきます。来年も強い馬場貴也を見せてくださいね!

 さて、そんなこんなの中盤の時間帯は、先述したように選手の数も少なくなってきていて、落ち着いているということは早い時間帯と変わらないのだけれども、どの選手も調整のピッチを上げている。もはや大きな作業をする優勝戦組はおらず、いわゆる微調整の範囲ということになるだろうが、プロペラ室の出入りは激しいし、試運転に出ている選手も多い。陸にボートがあった磯部も、7Rのエンジン吊りを終えるとそのままボートに向かい、着水に向かった。ちょっとピリピリしているように見える。

 そう、特にグランプリ組は、誰もが徐々にピリピリ感を強めているように思えた。特に石野貴之にそれを感じた。1年最大の大一番である。レースが近づくにつれ、また空の暗さが増すにつれ、緊張感が高まらなきゃおかしいのである。

 そんななか、峰竜太が比較的リラックスしているように思えた。ダービーからSGに復帰してきて、都合20日ほどSGピットで彼を見てきたわけだが、今日がいちばん柔らかい雰囲気なのではないだろうか。緊張していないとは思わない。だが、追い詰められる、あるいは自分を追い詰めるようなところは見当たらない。過去のSGの優勝戦でもこんな峰を見たことがあっただろうか。僕はそれをポジティブにとらえるのだけれど。

 シリーズ優勝戦組も同様にピッチを上げている。また、それぞれに気合が高まりつつあるように思える。関浩哉の顔がどんどんと鋭くなっているように思えるのは気のせいではないだろう。童顔であるのは変わらないが、たくましい童顔なのだ。SG初優勝に向けて、きっちりとペラ調整を進めている関。真冬の冷たい水面に放り込まれるシーンがますます現実味を帯びてきている。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)