１Ｒを終えて引き上げてきた田村隆信と寺田祥が、まったく同じような表情を見せた。呆気にとられたように視線を上げながら、溜息が聞こえてくるかと思えるほどやるせない顔つきに。やがて疲労感が漂い出して、仲間から声をかけられるとただただ苦笑い。
１号艇でインから先マイしながら、逃げられなかった田村。１マークはまくり差しを突き刺しながら、内を差した魚谷智之に追いつかれて勝ち切れなかった寺田。ともに悪くない走りを見せたというのに、劣勢の機力に泣いたかたちで結果を出せなかったわけだ。それはもう、悔しいというより、どうすりゃいいんだの境地なのだろう。田村も寺田も厳しいパワーに苦吟してきた予選道中。それを象徴するかのような結果に、呆然とするしかない。
このレースはパワー厳しい選手が他にもいて、昨日のレース後に整備を行なった原田幸哉もその一人ということになろう。見せ場らしい見せ場も作れずに４着に敗れ、何度も何度も首をひねっている。整備の効果があまりなかったか。ただ、原田はまだ準優進出の目がある。この４着で条件は厳しくなったけれども、後半は１号艇だ。というわけで、レース後はまたもや本体整備。なんとしても予選突破の気合がうかがえる。
ワーストパワーかとも思われてきた土屋智則は５着。今日はピンピンでも予選突破は厳しい状況で、この大敗はほぼ引導を渡されたものと言うことになる。ただ、土屋は勝負を投げる気配はなく、レース後はやはり本体整備に取り組み始めた。準優の目がないからもういいや、とはならないのだ。今日の後半９Ｒ、もしくは明日以降に実を結ぶよう、パワーアップに励む思いは途切れない。
準優絶望は、２Ｒを走った西山貴浩も同様。西山もやはり機力に泣かされてきた予選道中だった。しかし、レースに出る以上は全力投球！ レース前、西山は待機室のすぐ外で、彼のルーティンであるストレッチを行なっていた。右手をピンと掲げ、左手は腰に回して何度かジャンプ。次に左手を掲げて、右手を腰に回してまたジャンプ。最後は両手を掲げ、両手のひらを後ろに向けて、またジャンプ。身体のバランスを整えるストレッチ、なのだと思うが、西山はレース前に必ずこれを行なっているのだ。それは、予選突破の可能性がないレースでも変わらない。そして２Ｒは３着。勝負駆けの毒島誠の追撃を許さなかった。勝ち上がりの可能性が薄くなったとか、勝負師たちには関係ない。彼らの奮闘にもエールを！（ＰＨＯＴＯ／中尾茂幸 池上一摩 ＴＥＸＴ／黒須田）
