BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――しみじみ

 10Rは松井繁と今垣光太郎、今節の登番上位2人のワンツー! 内枠に入ったベテランがきっちりと貫禄を見せつける一戦となった。逃げ切った松井はもう、威風堂々。右手を掲げて対戦相手に礼をする姿には、貫禄という言葉しか浮かんでこない。まさに王者である。

 今垣のほうはといえば、登番最上位でありながら若々しいという言葉がふさわしいわけで、ボート回りでせわしない雰囲気を見せつつボート回りをチェックしたりなどして、松井とは好対照という感じ。これがまた光ちゃんのいいところである。

 そして、この2人につづいて3着に入ったのが、今節登番が最も若い末永和也! なかなか興味深い結果になったのであります。松井がSG初優勝を果たしたのは96年オールスター。末永はまだ生まれていない。今垣がSG初優勝を果たしたのは99年クラシック。末永は生まれて1カ月ほど。そんな末永が松井と今垣につづいて3着入線とは、なんともまあ、感慨深いというか何というか。もちろん末永はそんなこと微塵も考えていないだろうけど、ようやく舟券に絡んで少し表情が緩んだ末永を見ながら、松井と今垣より1つ年上のおっさんはしみじみしてしまったのであります。

 で、そのエンジン吊りの様子を見ながらギョッとしてしまったのは石野貴之の姿。午後になってさらに風が冷たく感じるピットにあって、石野はTシャツ姿! ワタシ、1年中アロハシャツを着ていて、冬もレジャージャケットを羽織ってるだけなので、頭のおかしいデヴと見られているわけなのだが、そんなワタシでも風は冷たい。Tシャツ一丁なんてムリムリ! しかし石野は別に震えるようなところもなく、てきぱきと作業をこなしているのだから、若いよなあ。えっ、石野ってもう40歳なの? マジか。まだまだ若手のような気がしているのだが……。松井にしても今垣にしても同様だが、ボートレーサーってみんな若々しいよなあ。もうすぐ5のゾロ目になるおっさんはまたまたしみじみするのでありました。

 8Rで磯部誠が5コースからまくり切って1着。かつて自身を差し屋と言ってはばからなかった磯部だが、まくる隊形になったら迷わず握っていく昨今。これが磯部をグランプリレーサーに押し上げた一因と僕は見ている。モーター格納を終えてあらわれた磯部に拍手を送ると、磯部は立ち止まって直立不動、そして深々とお辞儀。ようするに会心の勝利にゴキゲンなのだ。
「いくらくらいついたんですか?」
 磯部に尋ねられたので9900円くらい(正確には9950円)と教えると、磯部の目が丸くなった。それだけ!? そう、我々もまた配当を見てビックリしたのだ。5号艇が5コースから勝って、1号艇は圏外に敗れた。何万くらいつくかと思ったら、マンシュウではないのである。磯部も当然、万穴叩き出したという気分だったのだろう。それだけ磯部もSGで売れるレーサーになったということだ。むしろ誇りにして、明日からもたくさん舟券に貢献してくださいね。

 磯部とは対照的に肩を落としていたのが馬場貴也だ。ドリーム戦1号艇で登場ということは、今節の主役である。ドリームはしっかりと逃げたが、今日は外枠2走とはいえ、舟券に絡むことができなかった。ヘルメットをかぶったまま控室へと引き上げていった9R後、しかし俯き加減で落胆しているのは明らか。期待に応えられなかったという背信感も抱いてしまっていただろうか。昨年のMVPとしては当然、このままでは終われない。明日の反撃に期待するとしよう。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)