BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――ニシタクがまた……

 今日の1Rで、笠原亮の転覆に巻き込まれた近江翔吾は、ゴールはしたものの、実はその後に医務室に向かい、長い時間出ては来なかった。午後のピットに入ると、近江が仲間の試運転の上りを待っている姿。声をかけてみると案の定、1R後は軽い脳震盪で医務室にて休んでいたのだとか。元気そうにはしていたけれども、脳震盪ともなれば心配してしまうもの。だが近江は「大丈夫です。明日も走りますよ!」と力強く応えてくれた。しかも「ピンピンサンでまだ間に合いますから」と、予選突破を諦めていないともアピール。2走5着2回だが、1着1着3着で得点率6・00だ。その意気や良し! 明日は一日早い勝負駆けになるが、奮闘を見せてもらおう。

 整備室を覗き込むと、西村拓也が本体整備。思わず、ニシタク!?と軽く声をあげてしまった。今日の西村は2Rにセット交換をして登場し、1着。7Rにはギヤケース交換で登場して2着。明らかに足色は上向いているようにも見えていたのだ。朝の記事では、ニシタクがレース後整備士さんと会話を交わした様子を記したが、それはさらにギアケースを換えようという相談だったのかも。ともかく、だ。明らかに好転したにもかかわらず、さらに本体を割っていたのである。さあ、これがさらなるパワーアップになるのかどうか、明日のニシタクが非常に楽しみになってきた。

 8Rで磯部誠が3着。稲田浩二に競り負けた格好だったが、やはり気になるところがあったのか、レース後はすぐにプロペラ室へ。感じたことをすぐに反映させようと動いたわけである。この素早さと執拗さが、SGレーサーたる所以だろう。
 その作業が終わるとリラックスした表情を見せた磯部。ニヤニヤと近づいてきて、「毎日美味いもん食ってるんでしょう!」とクレーム(?)をつけてきた。もちろんですとも、節間は酒を呑めないあなたの分まで! 磯部が「いいなあ」と羨ましそうに呟いた。今節もいい結果を出せば、最終日に美味い酒が呑めますってば! で、しばし酒談義をしていると、実は酒場の好みが僕と同じだと判明。「そう、西山貴浩とかと同じなんですよ」。

 なるほどー、と笑い合っていたら、そこに西山貴浩登場! 試運転をいったん切り上げ、プロペラを手に係留所のほうからあらわれたのだった。西山が「噂をすれば!」と声をかけると、西山はニヤリとしただけで調整室へ。あら、いつもの西山だったら「何を噂してるんだよ!」とか乗ってくるはずなのに。
 実は、その直前、僕はかなり緊張感に包まれた西山を目撃している。12Rを控え、調整なのかレースの戦略なのか、明らかに思索を巡らしている様子だったのだ。こうしたときの西山は、いかにあの西山貴浩であっても、完全に勝負師モードに入っている。だから、その態度はむしろ、もう一方の西山らしさと捉えたのである。もちろん磯部もそれを感じ取っただろう。というわけで、静かに去っていく西山を横目で眺めながら、僕と磯部はさらに酒談義に励んだのでした(笑)。磯部、いい雰囲気だと思います。

 9R、椎名豊が勇み足に散ってしまった。部品交換をしていたように、機力的に劣勢だったのは明らか。6号艇6コースということで、踏み込まなければという意識が強すぎたか。その椎名を出迎えたのは高田ひかる。東海勢が不在のレースで、同期のエンジン吊りに駆けつけたわけだ。そして、この113期勢は今節、つらい結果となってしまった。傷を舐め合うというわけではないだろうが、やはり椎名の心中を最も察せられるのは、同じ境遇の同期ということなのだろう。もちろん反省はしなければならないが、二人で慰め合いつつ、残りの4日間も頑張ってもらいたい。

 その9Rでは守屋美穂が逃げ切ったが、スタート隊形からはむしろ、「スタート判定中」は守屋のほうが危ないのではないかと思われた。もちろん守屋も判定されていて、コンマ00のタッチスタート! 実は冷や汗ものの逃げ切りだったのだ。というわけで、エンジン吊りでは仲間たちとその話に触れながら苦笑い、ということになる。

 2着の桐生順平もコンマ01の早いスタートで、こちらも判定の対象ではあっただろう。レース後、整備室ではニコニコとした表情で守屋と語り合う桐生の姿があった。おそらくスタートの話もしているんだろうなあ、お互い助かったなーなんて、などと想像してみたのだがどうだろう。ともかく、これで残したのはツキがある証拠。明日からの好走にも期待していいだろう。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)