BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――勝っても整備

 北陸のジャックナイフが斬れ味発揮! 9R、見事なまくり差しで大穴を叩き出してみせた松田祐季。萩原秀人がニッコニコで出迎えると、松田は「やっちまった!」とでもいうような、微妙な笑みを浮かべてみせた。そのとき松田が知っていたとは思えないが、これが10マンシュウ! 特大の穴をあけて松田は、自分でも信じられんという風情で、仲間の祝福を受けるのだった。お見事!

 このレース、守屋美穂が3着。前半1着で、6号艇のここで連絡みは上々の初日と言えるはずだが、いったんは2番手の目もあっただけに、レース直後はキュートな顔をちょっと引きつらせているのだった。その意気や良し! ただ、この健闘に茅原悠紀や山口達也も笑顔で出迎えており、これはやっぱりナイスファイト。地元SGでまずはこれだけの仕事をやり切ったことは合格点の初日と言えるだろう。

 同じく地元女子の田口節子だが、守屋とは逆に大敗続き。8R後、深刻な表情で整備室に駆け込み、本体を割った。整備士さんも、地元で顔なじみということもあるだろうし、心配そうに田口の作業を見つめていた。

 そんな田口が、整備中にニッコリと笑った。そのとき、同じテーブルで同期の森高一真も本体整備を始めたのだ。3コースまくりで1着を獲っても、何か不満が残ったのか、整備を始めたのである。で、この男の性格からして、何か軽口を叩いて田口を笑わせたのに間違いない。顔は怖いけど、相手の心を和ませられる男なのだ。今節は、銀河系軍団が大挙参戦。ベストメンバーというか、ちょっと前のSGには勢ぞろいして当たり前の面々というか、ともかくここ10数年のSGを賑わした85期勢が久々に顔をそろえている。田口も心強いことだろう。

 ところで、森高は整備する前に、整備室内でくじのようなものを引いていた。何事かと見ていたら、森高は②番の札を引き当て、やがて奥のほうから整備士さんが②と書かれたキャリアボデーをもってあらわれたのだった。なるほど、部品交換の際、恣意的な部品チョイスが行なわれないよう、こうしてくじ引きで交換部品を決めるんですね。もう長年ピット取材してるけど、実は初見なのであった。②番のキャリアボデーがしっくり来ますように。

 その森高にさんざんちょっかいを出しているのが、仲良しの西山貴浩なのであった。家族ぐるみの付き合いだそうで、西山が森高と電話で話していたら、奥さんが森高の奥さんと電話をしていて、お子さんが森高のお子さんと電話をしている、なんてこともあったとか。その西山は、キャブレター、リードバルブと外回り調整に励んでいるのだった。森高に茶々を入れながらも、自分の仕事もしっかりこなすあたり、実は真面目なのである。

 10Rでは前田将太が2着。逃げた平本に迫る場面もあり、状態は悪くなさそうである。好モーターを引き当てた西山が昨日、足合わせでは前田のほうが分が良かったと言っていたが、その証言通りの気配と言ってよさそうだ。それだけに、ピットに戻った前田の表情は明るい。前半6着を巻き返せたことも気分を上げていただろう。今年はここまでSG初優勝が2件出ているわけだが、そろそろこの男も……。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)