BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――一撃!

 6R、今垣光太郎が6コース短期からまくり一撃! 内寄りが圧倒的優勢の今節、前付けはあったものの、3号艇ながら6コース単騎を選んで、気合の一発。今垣光太郎にはいつでもこれがあるから、本当にカッコ良すぎなのである。
 そして、レース後の今垣はといえば、今日もひたすら試運転。昨日も遅くまで走り続けていたが、快勝のあとでも変わらず、この炎天下を走りまくったのである。若手選手が、練習も兼ねてだろう、最後まで試運転を続けるシーンは特に女子戦でよく見かける。それを今節最古参の今垣がやっているのだから、驚くしかない。10R発売中の試運転では、係留所につけたあとももろもろ作業をしており、10Rのエンジン吊りには係留所から駆けつけるという珍しいシーンも。今垣がいつまでも若々しい原動力はこういうところにあるのだろう。

 今垣よりは先にあがったのだが、レース後の試運転を汗だくで走ったのはほかに菊地孝平、辻栄蔵、齊藤仁。ボーダーが6・00を下回らなければ準優進出が厳しい面々である。そう、予選突破は難しくなったとしても、彼らは決して勝負を投げていない。何が起こるのかわからないというボートレースの真理に照らしてもそれは正解だし、そうでなくともこのままで終わるのを良しとしない、一流の勝負師たちなのである。エンジン吊りを終えてカポック脱ぎ場へ帰る彼らは、顔面がもう汗でびっしょびしょ。そんなことも厭わずに走った彼らには、なんとか奇跡が起こらぬものかと思わずにはいられないのである。

 9R、守屋美穂が3コースまくり一撃! お見事! この勝利は大きい。今節の守屋は1号艇が回ってこない(6号艇も)だけに、ここで敗れていたら予選突破はかなり厳しいものとなっていた。それを自力で道を切り開いた。しかもまくりで内を沈めるという渾身のレースで。明日は気分よく勝負駆けに臨めるはずだ。

 レース直後もエンジン吊りに加わった仲間たちに称えられていた守屋だが、その後、着替えを終えてモーター格納に向かう際には、田村隆信や柳沢一、深谷知博らに呼び止められて、祝福を受けていた。田村や柳沢にはよくアドバイスを受けている姿も見かけており、“愛弟子”の快走に彼らのテンションも上がっていたのだろう。支部が違いながらも、SGの場で臆することなく教えを求め、授けられたことがこの勝利につながったとするなら、彼らも喜びはあるはず。そして、この勝利はまさに守屋の成長の証である。

 一方、まくられた濱野谷憲吾は悔しいというしかない。守屋に頭を下げられたレース後は笑みを返してもいたが、着替えたあとは即座にペラ調整所に直行。ゲージを当ててペラを点検し、ときにハンマーも振るっていた。インで勝てなかったことの違和感を、すぐに確認し、解消せずにはいられなかった。それが悔しさを実によく表現している。明日の勝負駆けが厳しくなってきたことも含めて、明日に持ち越すことができなかったその気持ちは、よく理解できる。

 同期のまくりの直撃弾を浴びて6着大敗の篠崎仁志は、とにかく足取りが重く、視線は自然と下を向いてしまっていた。守屋のレース後の挨拶を受けた際には、さっと手を挙げて応えてはいたが、内心はもやもやしたものがかなり残っていたはずだ。本来なら同期の快走は喜ばしいもののはずだが、素直にそういう思いにはなれなくて当然だ。今日はまさかの6着2本で、予選突破争いでは大きく後退を強いられてしまっている。それもまた、篠崎の心に深い霧を生じさせたことだろう。この明と暗の影は、かなり濃いものがあった。

 篠崎を含め、地元勢が思うようにポイントを伸ばせていないなか、大将の瓜生正義が10Rを逃げ切った。これでなんとか明日の勝負駆けにつなぐことができた。レース後はさすがに貫禄たっぷりに対戦相手と接していたが、どこか安堵の空気も感じられた。福岡勢が総崩れという事態は絶対に避けたいわけで、だからこそこの1号艇は負けるわけにはいかなかった。前付けがあるレースだったからなおさら。この瓜生の意地の逃走に刺激を受けて、明日の地元勢の勝負駆けがどこまで熱くなるのか楽しみになってきた。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)