BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――1st組の貫禄

 シリーズ優勝は深谷知博だ! 優勝戦唯一のトライアル1st組。つまり、格が違ったということなのか。

 前田将太がレース後、上條暢嵩に「全員が練習していない起こしだった」と話しているのを耳にした。トップスタートが岡崎恭裕のコンマ16。前田にしてもコンマ21で、だから上條に向けて顔をしかめてみせている。
 深谷もコンマ21。しかし、総じて遅めのスタートとなったなかで、これは過不足のないものだった。いや、インがコンマ43と遅れたことを考えれば、そのスタートを行けたことが勝因のひとつであるのは明らか。そして、やや遅めとは言いながらも、オールスローで起こすタイミングがわかりにくいなかで勝てるスタートを決めたのは、やっぱり貫禄と言うしかないのである。
 さらに言えば、昨日足色を一変させたことも大きかった。トライアルでは明らかに劣勢で、シリーズに入っても上位とは言いがたかった足を、整備で立て直した。それもまた、明らかに深谷の実力だ。

 そうしたものがすべて噛み合って、愛妻の地元でSG制覇! お見事!
 というわけで、レース後はもちろん笑顔満開の深谷であった。静岡支部の面々が「おめでとう!」と駆け寄る。菊地孝平、坪井康晴、河合佑樹、そして徳増秀樹が次々と笑顔で声を掛ける。そうか、深谷は静岡支部では今節もっとも後輩なんだ。改めてそう思った次第なのだが、つまりそうとは見えないほど、堂々とした振る舞いで栄冠を勝ち取ったのだということだ。これでSG3冠!

 それにしても、関浩哉よ……。先述したとおり、コンマ43という痛恨のドカ遅れ。初めてのSG優勝戦は、関に最悪の思い出を残すことになってしまった。モーター返納を終えると、関は勢いよく整備室を飛び出している。コメントを取ろうと報道陣が歩み寄るが、関は駆け出して止まろうとしない。記者さんも追いかけるが、関は走りながら一言二言残すと、スピードを緩めぬまま、控室へと飛び込んだ。その胸中、強烈に察せられる。誰とも接触したくない、そんな敗戦は確かにあるし、関は今日、それを経験してしまったということだ。月並みになってしまうが、関はこれを糧にしなくてはならない。そして、いつかこのリベンジを果たした時、今日のことを笑って語ってほしい。自分を強くした経験だったと。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)