BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――勝っても負けても

 3Rで2コースから鋭く伸びてジカまくりを決めた石野貴之が、後半11Rに向けてペラを叩いていたのである。それもけっこう力強く。3Rの勝ちっぷりを見ると、初日にしてかなり仕上がっているようにも見えたのだが、それでもなお叩くのか。あるいは、3Rはまだ調整途上で、それをさらに仕上げにかかったのか。そうだとしても、3Rの足を見たらキープしたくなったりはしないのだろうか……。通常、ペラを強く叩いている場合は仕上がりいまひとつだから叩き替えている、というものだと思っているわけだが、そうとも限らないからボートレースは奥が深い。

 なにしろ、8R発売中には今垣光太郎が本体をバラし始めたのである。7Rで4カドから伸びて、1マークはまくり差しで見事に突き抜けた今垣が、である。伸びは上々と見えたのだが、しかし今垣自身は違和感を覚えていたというのか。まくり切れずにまくり差しに構えなければならなかったのが不満だったのだろうか。まったく声をかける隙が見当たらなかったので、その真意は今のところは不明だが、その飽くなき上昇志向には彼の年齢を考えれば実に感服なのである。

 その手前では、村松修二が本体整備をしていた。2R、6コースからまくり差しを決めた村松が、である。いや、あれは伸びてたでしょ。これもまたまくり切れずにまくり差しに出たものだが、コースを考えれば充分な足色に見えたものである。三島敬一郎が「出足は甘いが、直線系はかなりいい」と評価し、今節の二番手にあげていた48号機。その期待通りの動きに見えたのだが、村松は本体を割るのである。その真意はというと、「いつも通り、外回りを中心に点検していた」というもの。2R1回乗りでレース後に時間がたっぷりあったから本体を割ったということか。ただし、「やっぱり出足が欲しいですね」とも言っていたから、そちらの足を模索しての整備ということにもなるだろう。6号艇1着という最高の発進ながら、しかし浮かれることも満足することもない。若いのに見事な姿勢というほかない。

 初戦4着、7Rで5着。一息な初日であった赤岩善生だが、さらに7Rでは不良航法をとられてしまった。厳しいジャッジとも思えるのだが、それはともかく、このマイナス10点で早くも予選突破がかなり厳しくなってしまったわけである。しかし赤岩は、まったく緩めることはない。まずはステアリングバーをいくつか見比べて、おそらく交換。さらにはギアケースを外して調整を始めていた。得点がどうとか、裁定がどうとか、そういうことは意に介することなく、不貞腐れもせずに、やるべきことを淡々とやる。赤岩らしいスタンスだ。残っているのは1号艇と外枠。1号艇なら必勝態勢だし、外枠なら前付け。それで結果を出すために、赤岩は動くのをやめようとしない。何が起こるかわからないボートレース、何かあったときに好機をつかめるところにいるべく、赤岩は全力を尽くすというわけだ。

 西山貴浩も同様。9Rは5種の部品を換える大整備で登場したが、奮闘むなしく6着。さすがにレース後は落胆の色を隠せなかったし、ちょっと苛立った顔も見せたりしていたのである。それでも、着替えを終えればすぐさま整備室へ。明日に向けて、やるべきことを着々とこなしていくのであった。もちろんあきらめるのはまだ早いわけで、明日の6号艇で何を見せてくれるのか楽しみにしていよう。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)